コンビニ草紙 第二十話-2
確かに気持ち悪いな…。
着替えを探してくれるって言っていたけど、お祖父さんが女の人の服などわかる
のだろうか―。
すっと隣の部屋の襖が開いた。
「りょうこさん。ちょっとこっちに来ていただけないか。」
お祖父さんは襖を半分開けて手招いた。
お祖父さんのいる部屋に入る。
畳の上に何着か着物が出ている。
「これなんかどうかね?サナが若い時着ていたのだからきっと
リョウコさんにも合うんじゃないかと思うんだがね。」
お祖父さんはそう言うと、淡い緑色の着物を広げた。
裾と袖のあたりに桔梗の花が描かれている。
「あの、お祖父さま、こんな高そうな着物…それに私、
恥ずかしながら着付けが出来ないんです。」
「お祖父さまなんて、そんなケッタイな言い方やめてくださいよ、リョーコさん。
長次郎で結構です。」
「えっでも…。じゃあ、長次郎さん。」
「はいよ。」
長次郎さんはニコニコしながら答える。
「あの…私着物の着方が…。」
「あぁ、そうだったそうだった。その事ならお華さんを呼べば良いから
気にしなさんな。」
おはなさん?
よくわからないが、長次郎さんはにこにこしながら一階に降りていってしまった。
どうやら電話をかけにいったようだ。
藤色、ヨモギ色、桜色…様々な優しい色の着物がたんすの中から顔を出している。
畳の上にも何枚か出ていて、帯も一緒に置いてある。
まるで呉服屋さんにいるような気持ちになって、私は一着一着書かれている
絵や刺繍を眺めていた。
「あのー。」
振り向くと、襖の脇から草士さんが顔を出している。
「あ、すんません…。お茶、沸きましたけど…じいちゃんは?」
「あ、なんかお華さんっていう方を呼ぶって下に降りていきましたけど…。」
「へ?お華さんを?なんででしょう。」
「多分、私が着物の着方がわからないと言ったからだと思います。」
「はぁ…。わかりました。じゃあ、着替えてからお茶にしますか。」
「え、でも…。」
そう言いかけた時、
チリリンッと下からドアベルの音がした。
二階に長次郎さんが上がってくる。