囚われからのプロローグ-8
「す、すまない……」
痛みを優に想像させる味覚に、口からは反射的に謝罪の言葉が漏れた。
だが、パスクは恨めしそうにアリスを見つめると、その赤い舌で己の血の気のない唇をペロリと舐めた。
そして、右手に持ったアリスの枷を持ち上げ、中腰の姿勢を強要すると再び、その唇を色の白いアリスの顔へと近づけていく。
「な、なにを……?……」
「ふんっ」
「ひぃ、ぅ……んふぅ……」
パスクは血の滲む舌を唇から出し、アリスの頬を一度、舐めた。
右頬に熱と粘度のある液体を感じたアリスは悲鳴をあげるが、それもすぐに唇ごと塞がれてしまう。
――くちゅ、じゅ……ちゅる、るる…………
「んっ、ふぅむ……んん〜っ!、はぅ……」
「れろ……ちゅぷ、んっ……どうですか?クチャ……貴女が流させた、敵兵の、ふぅん……血の味はァ?」
血の味を覚えてしまったアリスはパスクの舌へと歯を立てることはできなかった。
そんな彼女の心情も把握しているのだろう、パスクは薄い、冷たい笑みを浮かべると執拗にアリスの口内を嘗め回した。
舌同士が絡まり、劣情的な水音が起こり、その度にアリスの舌は生暖かいパスクの唾液と血を味合わされる。
あまりのことに脳は現状を処理することができず、頭が熱を帯びたように、ぼぉー、とした。
五分以上、続いただろう。
ようやく満足したのか、パスクはアリスの唇を解放した。