囚われからのプロローグ-5
ならば、自室が一番、都合が良かったので、
「いえいえ。私の部屋で結構です」
と言ったところ、おかしな表情をなされました。ですが、『まぁ、いい』と漏らし、続けて、
『服装や下着に注文はあるか?前線の砦だが、可能な限り、希望に合わせるぞ?』
と仰られました。ここで、私は再々度、首を捻りましたが、アリスさんの格好のことだろう、と思いまして、
「……できれば、拘束時の甲冑を」
と答えました。
い、いえいえ、別に私がそういう嗜好だったわけではなく、そのほうがアリスさんも平常を保てるだろう、と思いまして、それで……。
ですから、その視線はお辞めいただけません?
――ふぅ。す、すると、
『甲冑?ふぅむ……なかなか、ピンポイントな――だが、まぁ、よい。了解した。夕方にはおまえの部屋に送っておいてやる』
と。
いや、まさか、このようなことになっていようとは。
私はただ、少々、アリスさんとプライベートなお話しをしたかっただけで……」
そう締めくくると、パスクは「あはははっ……」と笑い、頭をかいた。
「……………………」
アリスはジトリとパスクを睨む。
すでに『魔人』と字された恐ろしさは消え失せ、ただの気弱で、礼儀の正しい青年にしか見えない。