囚われからのプロローグ-4
「あの……どうも、相互間に誤解があるようなのですが――伝令の者からはなんと?」
「貴様が、私を欲している。だから、牢から出され、湯浴みをさせられ、鎧を着させられ、いま、こうしている!」
「あ〜〜っ…………あぁ……。な、るほど――確かにそういうことでも、ねェ」
敵愾心を込め、己を刺すように睨むアリスから視線をそらすとパスクは天井を見つめて、頬をかいた。
アリスは首を傾げる。
「……?なにを言っている?」
「いえ、ね。別に、私はそういうつもりは毛頭なく――ですが、まぁ、一般的な捉え方だとそういうことに、はい」
「……は?」
アリスは眉をしかめ、あまり上品とは言えない台詞で疑問符を浮かべた。
普通、捕虜の、しかも女にそのような口を利かれれば腹も立つだろうに、パスクは気にした様子もなく、平淡と答える。
「私は将軍に、
『褒賞を与える。なにか要求はあるか?』
と訊ねられましたので、
「はい。私はリンクス王国エレナ王女親衛隊『聖騎士』アリス・バハムントの命を――」
と答えました。すると、次に将軍は、
『アリス?ああ、あの栗毛の、美しき女か……彼女は他にも希望があるのだが――まぁ、良いだろう。おまえの戦果に比べれば、な。それで?』
と仰られたのですが、私は意味が分からず、
「それで?――とは?」
と訊ねましたところ、将軍はニヤリと笑いまして、
『それで、どこがいい?好きな場所を言え。おまえの自室では――少々、雰囲気がな……』
と、答えられたのです。しかし、それでも私は意味が分からず、だからといって、さらに、もう一度聞き返すは失礼だと思いまして、勝手に対面する場所のことだと納得しました。