囚われからのプロローグ-35
「わ、私は、本当に、初めてなんだ……ほんとだ、嘘じゃないっ!私は――」
「アリスさん」
「な、なんだ?」
アリスは非処女の疑いを晴らそうとまくし立てるが、パスクに名を呼ばれ、口を噤む。
パスクの声にどこか、怒気が含まれているように感じたのだ。
ジッと『女聖騎士』を見つめ、繋がったままの『魔人』は告げる。
「私が、貴女を疑うわけがないでしょう?たとえ、いくら、どんなに信じられないことでも、貴女の口からであれば、信じますよ、私は」
「パ、パスクぅ……」
思わず感動したアリスはパスクの胸へと顔を埋めた。
「それに――」とパスクは続ける。
「騎士や、闘技、雑技を鍛錬する方の中には、その間に膜が破れてしまうとも、聞いたことがありますし、ね?」
「……は?」
アリスは呆けたように得意げなパスクを見つめた。
そして、訊ねる。
「知っていたのか?膜が、その、破れているっていう――」
「ええ。その、処女膜について書いてあった本に、一緒に」
「〜〜っ!私が、どれほど、不安になったとぉっ!」
「わ、わ……どうしたんです、アリスさん?」
アリスはローブ越しにパスクの胸板をポカポカと殴る。
――もちろん、本気ではない。
が、本当に不安だったのだ。
八つ当たりくらいは許して欲しい。
アリスは最後にそのパスクのローブへと額をこすりつけると、呟く。