囚われからのプロローグ-27
「…………んん、ぷはぁ……」
パスクはアリスの口内でやりたいことを全部やったのだろう、唇を離すと満足気な表情を浮かべた。
一方、アリスは口の端から、どちらのものか――おそらく、両者の――垂れた唾液を腕でぬぐうと、ムッとした表情を浮かべる。
すると、なにが可笑しいのか、パスクは微笑み、アリスの身体をソッと抱きしめた。
「――んっ」
アリスは好意のある異性に抱かれる幸福に脳髄が痺れるのを感じた。
パスクはアリスの耳元へ唇を寄せると、優しく囁いた。
「……申し訳ありません。少々、悪戯が過ぎました。ですから、その……よろしいですか?」
「ぁ、ああ。頼む……もう……」
「ええ。分かっています……」
パスクはアリスのその白い腰を滑るように手の平を這わせ、彼女の腰を覆う、黒色のストッキングの淵へと手をかけた。
スルスルとストッキングが――自身の秘所を隠す最後の布が――下ろされていく、妙な恥ずかしさにアリスは目を瞑って耐えた。
――ピリ、ピリリ……ピリッ……
「っ?」
突然の布の裂かれる音にアリスは驚いて目を開けた。
すると、パスクがストッキングを――着用時には丁度、左右になるよう――縦に裂いていた。
驚いたアリスだったが、もともとそういう使用だったのだろう、簡単に、なんの抵抗もなく、ストッキングは左右に断裂された。
考えてみれば、膝当てや脚甲は脱いでおらず、ストッキングを脱ぐことはできなかったのだ。
そこでアリスはこういう――女騎士が、される――プレイのためのストッキングだったのだと悟った。
――まったくもって、変態的な嗜好である。
現在、自分とパスクがその『変態的な嗜好』の下に行為を行っていることは棚に上げ、アリスは胸中で憤慨した。
だが、それもパスクが漏らした「ほぅ……」という溜息に中断を余儀なくされた。
よくよく、考えれば、いま自分は――ほとんど全裸なのだ。
アリスはあまりの恥ずかしさにクラクラしながらもパスクへと視線を送った。
そして、訊ねる。