囚われからのプロローグ-23
「ア、 アリスさん……なにを……?」
「――っ!パスクッ!」
そんな『魔人』をアリスは睨んだ。
「は、はいっ!」
「貴方が私を襲ったのだろう?」
「え?……はい。申し訳ありません」
「申し訳ありません、じゃない。私はま、まだ経験がなかったんだ。それを、あんな……乱暴で、浅ましい――」
「本当に申し訳なく――」
「謝るなっ!男だろう!」
「はい。すみま……いえ……」
「貴方のせいで私には性交の恐怖の記憶が刻まれた。だから――、……」
そこで、アリスは言葉につまった。
パスクは恐縮しながらも、首をかしげて聞き返す。
「……?だから?」
「だ、だから……パスク、貴方には、わ、わわ――私のその、記憶を塗り替える義務があるっ!……と、思う……」
「……はい?」
顔を真っ赤にさせて叫ぶアリスへとパスクは疑問符を投げかけた。
それほど、この『魔人』には意味不明な台詞と理屈だった。
――というよりも、アリス自身にすら理解不能だ。
だが、恋愛経験の皆無なアリスにはこれが限界だったのである。