囚われからのプロローグ-16
「……、……、……、……、」
「ほう?口ですか?私はてっきり、口の中だけはイヤかと……では――――ッ!」
意外そうに眉を潜めたパスクだったが、限界が訪れたのだろう、思考を止め、精を解き放った。
――アリスの要求通り、アリスの口の中に。
「んん〜〜っ!?」
アリスは口内で膨れ上がったソレと、直後、迸った脈動に驚愕した。
しかし、注がれる大量の精にアリスは吐き出すことも適わず、やむなく、嚥下した。
「んくっ……コクコク、コク…………ぷっはぁ……けほっけほっ!」
飲みにくい、粘度のある半固体が喉をネットリと通過し、後からえも言えぬ生臭みが喉と言わず、鼻腔と言わず、占拠した。
少なくとも、決して気分のいいものでない。
コレだけは確かだった。
アリスは憎憎しげに、自身の上から退いたパスクを睨んだ。
魔導師の青年は意味がわからない、と眉間にシワを作った。
その表情が、またアリスの神経を逆撫でした。
「〜〜なんてモノを他人に呑ませるんだ、貴様はッ!」
「いえ、ですが……貴女が口に、と」
「ああ、言った!だがな、貴様が素直に従うとは思っていなかったのだっ!」
「ああ、なるほど……そうでしたか……」
そこでようやくパスクは合点がいったようだったが、同時に、悲しそうに目を伏せた。
そんなしおらしい『魔人』にアリスは怒りもみるみる冷め止み、純粋な疑問だけが残った。