囚われからのプロローグ-11
「くくっ……これはこれは、なんとも美しい」
パスクはアリスの半裸体を観察し、そう評した。
騎士であったため、引き締まった無駄のない肉体。
だが、陽には焼けておらず真っ白で、シミひとつない。
そして、そこだけは至極、女性的な豊満な乳房。
その中心には桃色の金貨大の乳輪と小まめのようにツンと立つ乳首。
確かに、戦乙女を描いた絵画のような美しさがそこにはあった。
しかし、だからといって恥ずかしくないわけではない。
アリスは屈辱に唇を噛んだ。
普通の女ならば、この辱めに涙していただろう。
「……んっ、ちゅぷ」
「ひぅ?」
アリスは悲鳴をあげた。
突然、腹部に刺激を感じたのだ。
腕から顔を離し、見てみるとパスクが、すでに見慣れたその赤い舌でへその辺りを舐めている。
アリスは思わず、奥歯を噛んだ。
悔しさも、もちろんあったが――感じてしまったのだ。
こんな敵軍の、祖国を征服した男の舌で感じるはずはない、と思いながらも、そんな心とはうらはらに身体は正直だった。
パスクが腹を、脇を、首筋へと舌を這わせるたびに、アリスの脳髄は電流に打たれ、痺れを感じ、快感を覚える。
二十歳も過ぎれば、人間の身体など当然として異性を受け入れるように発達するのだが、いかんせん、アリスは処女であり、未だに乙女であった。
脳裏では必死に言い訳を生み出し、否定しようとする。
だが、それもパスクの舌がいよいよ、胸部への攻撃を開始するまでだった。