過ぎ行く時の中、残されるモノ-6
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忠志がある場所に戻ると、そこには血とか僕の吐いたものがあった。けど、無かった。
「どういうこと?」
「多分、出たんだろ……」
「出た? 出たって何が? まさかアイツら? もしかして、アイツらは人を食べるの?」
「いや、食べるっていうか……まぁそんなとこだよ。それより……」
「そんなとこって、それじゃ僕ら、ここに居たらまずいんじゃないの? アイツら近くに……」
周囲を見るけど、誰かが居る気配はない。だけど、僕はなんだか怖くなって隆から後ずさった。
「大丈夫。任せて欲しい。ちゃんと和義に出る方法を教えるから……」
隆は僕のほうへ歩いてくるけど、僕はそれから逃げるように下がる。
「隆、なんだよさっきから、出る方法を教える教えるって、全然教えてくれないじゃないか? この変な場所をぐるぐる回るだけだし、さっさと出ようよ。僕は家に帰りたいんだ!」
強気に言うと隆は立ち止まった。ふうとため息をついて僕を見るけど、もしかして隆もアイツらの仲間じゃないよね?
「和義。今すぐには教えることはできないんだ。とにかく、僕と一緒に来てくれ……。ここに居てもいいことはないし、出ることなんてできないんだ」
「でも、なんで君は……」
「いいから、僕を信じてくれ。君にもここを出る方法を教えないといけないんだ……」
「そんなこと……信じられない!」
僕は叫ぶと同時に走り出した。
このまま隆と一緒にいても帰ることなんてできない。何にも話してくれないのに、どうして信用しろっていうんだ!
「和義!」
後ろで隆の声がしたけど、振り返るわけにはいかない。
多分、きっと、いや、絶対そうだ。
隆もアイツらの仲間なんだ。
僕を騙してアイツらの餌にするんだ!
忠志の傍から連れ出したのだって、僕が居たら都合が悪いから、だから、帰る方法を教えるってうそをついて!
「待て、和義!」
必死で走っているけど、全然だめだ。すごく息苦しいし、距離が縮まる一方だ。
おかしい。そんなに走ってないのに、どうしてこんなに息ぐるしいんだ?
いつもならこれぐらいわけないのに!
「和義……」
僕を呼ぶ声が別のほうからもした。
誰!?
でも聞き覚えがある。
気になった僕は追われているのに、一瞬声のほうを見てしまった。
「忠志!?」
そしたら、忠志が居た。でも、やっぱり様子が変だ。
左足引きずってて、左肘から下が無い? というか、頭……、なんかへこんでて、目玉もぼろって飛び出してる!
「ぎゃぁあああああぁああぁあぁ!」
「待ってくれ、和義……。俺、ここを出たいから……」
またしても腰が抜けた僕はそのままその場所にしゃがみこんでしまった。
忠志は僕のほうへと歩み寄ってきて、たまに思い出したように目玉を戻しては落すを繰り返す。
「な、忠志、こっち、こないで……」
「和義、お前は見つけたか?」
「見つけた? 何を? 出口? 知らない。教えてもらってない!」
僕がそう叫ぶと、忠志の口元、まだ壊れていない右のほうがにぃって笑ったのが見えた。
「来るな! こっちに来るな!」
「そういうなよ、教えてやるからよ……」
「頼む、来ないで! 来ないでくれ!」
忠志は僕の前までくると、手を伸ばしてきた。
ぽたぽたと滴り落ちる血。
頭からも何かが漏れているけど、なんだかわからない……?
僕はぎゅっと目を瞑った。
そしたら、ぽんと両肩に手が触れた。
おかしい? だって忠志の左ては……?
僕はそっと目を開けた。すると、忠志の顔が……?
さっきまで壊れたっていう言葉がよく似合っていたんだけど、よくみるとなんとも無かった。