最後の夜・前編-6
コンコン―カチャッ…
「姫様ぁ、起きてますかぁ?」アンが囁き、光が部屋に差し込んだ。
ドキッ、ドキッ、ドキッ
胸の鼓動がロイにきこえてないか不安になる。
ロイはいま私と一緒にシーツに入っている、というか隠れる場所がなくて引っ張り込んだ。
ロイの目の前には夢のような光景が広がっている。
向かい合って潜った先には、胸元の大きく開いた寝巻きから横になっているために形を変えた胸が見える。
柔らかそうな膨らみが目と鼻の先に…
長年恋焦がれて遠くから見ることしかできなかったガーネットが、いま触れられる距離に…
葛藤は短かった。
もうどうにでもなればいい――
ちゅっ…
「…っ!?」
息が詰まり、胸から全身に電流が流れた。
あっ…?ナニ?なに?胸になにかっ…吸われてる?
ロイはガーネットの胸の膨らみにきつく吸いついていた。
「…寝ておいでですね、失礼しました」アンがゆっくりと扉を閉めた。
コツコツ…
足音が遠ざかっていく。
「〜〜〜〜〜っ!!」
ガーネットは足音が聞こえなくなるまで堪えてガバっとシーツをめくった。
「あっ…!ロッ、ロイ!?」
そこには未だにガーネットの胸に顔を埋め瞳を閉じながら唇を這わすロイがいた。
ロイが唇を当てて、ちゅっ、ちゅ、と音をたてるたびに身体の芯に熱が生まれる。
「…ぅんっ!ロイ!!」
……このまますべてを投げ出してしまいたい。
一瞬そう思った。
精一杯理性を働かせ、ロイから逃れようと身体を離そうとロイの胸に手をつっぱる。
するとロイは胸から顔を離し、ガーネットが逃げないように腰に手を回し引き寄せた。
ロイの濃い茶の瞳に戸惑ったガーネットが映る。
朱色の瞳がゆらゆら揺れていた。
「…ガーネット…俺はお前が好きだよ」
「…ロイ…!」
「たぶん、きっと、これは愛だ…」
胸が詰まって言葉がでない……
目頭が熱い…
真剣なロイの顔。真実だとわかる。
この胸に、この人に飛び込んでいけたらどんなにいいか…