最後の夜・前編-11
「あ…っ?ロ…ロイ!!」
じりじりと背中が焦げ付きそうになる。
足が震えて身体の力が抜けていく。
「ん…っっぅ」
ゆるゆると首筋まで舐めるとチャックを閉め、ちゅっと唇を離した。
「ハイ、できた」
「っもう!ロイ!!なんてことするの!!」
ロイが悪戯っ子のように口元を歪めて笑っている。
顔が沸騰したように熱い…
「とても綺麗だよ。さすが俺のガーネット」
ドレスにはふんだんにレースがあしらわれ、そこかしこにビーズが縫い付けられている。
絹の生地はガーネットの身体に沿って美しい陰影を作っていた。
「ロイ…」
こんなドレス、貴方のためのドレスじゃない…
誰かの為の婚礼衣装姿なんて、貴方に見て欲しくないのよ?
「本当に結婚しちゃうんだな…」
ロイが切なそうに目を細めた。
「…そうね…」
胸が苦しくて苦しくて張り裂けそう…
毎晩毎晩、ロイが帰った後に悲しくて幾度も泣いているのに涙は枯れてくれない。
みるみるガーネットの瞳が濡れていく。
朱色の瞳が光沢を放って、本当の宝石のように艶を帯びる。
「俺のためのドレスじゃないって分かってるんだけど、不思議とやっぱり綺麗って思うんだな…」
「やめて、ロイ…っ。そんなこと言わないで…」
貴方のものになれたら、この3ヶ月あまり何度も思った…
いえ、きっともうずっと前から――
結婚なんてしたくない。
ロイ以外の人となんて一緒になりたくない…
誰かの為のドレスを綺麗だなんて言わないで…
「ごめん…ガーネット…」
もう泣いた顔なんてみたくないのに。
残された時間、笑顔だけで過ごしたかったのに。
俺は結局ガーネットを泣かせてしまう……
泣いた分だけ抱きしめて慰めたいのに、それすらも出来ない――
二人で傷つきあうことしかできないんだな――
「…ガーネット。もう逢うのはやめよう」
「えっ…そんな、なぜ?まだあと1週間あるわ」
「俺はもうお前を泣かせたくないのに、泣かせない自信がない…笑った顔だけ覚えていたいのに、悲しそうな顔ばかりさせてしまう」
「ロイ、私は平気よ?だから…!」
ロイがうなだれたように顔を横に振る。