下校途中の寄り道 -2
「まぁいいさ。じゃ、また来週な。今度の試合で途中出場したらまた頼むぜ。」
「ああ、じゃあな。」
一方順子は下駄箱までサッカー部のマネージャーの石崎紀子と話ながら歩いていた。
「しかし順子も野村と付き合い始めたか。」
「だから違うって。正之は友達なの。」
「いいよ、そんなに無理しなくて。」
紀子は色黒と言えるぐらい日焼けしており、また髪も少々染めている。
昔ながらの言葉で言えば不良学生みたいなものだったが順子とは気が合い-いつも話をしていた。
「でも野村とよく付き合う気になったわね。」
「だから違うって。それに正之もかっこいいところはあるわよ。」
「わかった、わかった。じゃまた来週ね。」
「うん、じゃあね。」
校門で自転車に乗ったまま待っていた順子に同じく自転車に乗ってきた正之がやってきた。
「ごめん、待った?」
「ううん、そうでもなかったよ。行こう。」
W高校は自転車通学の生徒が大半だった。近くにバス停はあるにはあったがバス通学を
している生徒はあまりいなかった。正之と順子は最寄駅のハンバーガーショップに
入り、ハンバーガーセットを頼んで持ってくるとボックスシートに向き合って座った。
「しかし暑いねえ。」
「まるで真夏にいるようだよ。で、これからどこ行く?Y駅の駅ビルのデパートに行くかい?」
「うーん、そこ前に行ったし・・・。そうだ、海浜公園の砂浜行ってみようか?」
「いいね。夏休みは海に行けなかったしなあ。見るだけでもいいか。」
「うん、行こう!」
二人はそこそこ食事を切り上げると自転車で30分のところにある海浜公園の砂浜に向かった。
自転車で共に走りながらも二人はおしゃべりに夢中になっていた。
「でもさあ、あまり私たちの関係を否定してもあんま意味ないんじゃないかな。
みんな私と正之がカップルだって思っているわ。」
「その噂が先公の耳に入って、たとえばどこか繁華街で見られた時に
ヤバイじゃん。だからあらかじめ否定しておけばセックスしても強弁できるからね。
「先公なんて言わないの。それにセックスって言わずにHって言いなよ。
セックスなんて率直に言うのはいやらしいわ。」
「そうかなあ・・・。」
まだ昼の12時半を回ったところだった。海浜公園の砂浜は夏は海水浴場だったが
今は閉鎖されていて、サーファーが我が物顔で波に乗っている。
「うわ・・・凄いサーファーの数だな。」
「今はサーファーシーズンだからね。」
ふと見ると岩場のあるところからソバージュにビキニと短パンのジーンズを着た
どう見ても日焼けサロンで焼いたと思われる小麦色の
サングラスをした20歳前後の女性と同じく日焼けサロンで焼いたと思われる
小麦色した肌に筋肉質で茶髪のサングラスをかけた、
いかにもサーファーといった感じの20代半ばの男が登ってきて、
何気なく二人で道路の歩道を歩いていった。
正之と順子は自転車を降りてそれを見つめていた。