JoiN〜EP.4〜-6
「わ、私、水着なんて何年も着てないよ、出来ない!カメラの前で笑えないよ!」
「栞菜、分かってくれ。それが芸能人なんだ。明るい姿を見せて周りの人を元気にするのが仕事だからな」
「・・・・・・!」
わざわざ外に連れ出したのはこの為・・・?
電話じゃ伝えられない、直接言うのも無理、だから場所を変えて伝える為に・・・
普通じゃ言えなくても、そうすれば相手に言える、そう考えてるのかもしれない。
よく分からない考え方だろうけど、日比野さんなら考えそうだから・・・
「あのさ、栞菜」
次に続くのはなんだろう。
撮影の日にちとか、着る水着の種類とか、どれにしたって嬉しい話じゃ無さそう。
「もしこの話が嘘だったらどうする?」
どうするもこうするも、こうしてやる
私は日比野さんの腕をねじりあげてやった。
悲鳴が聞こえようが関係ない、絶対に許さない。
どうしてこの人は無神経なんだろう。信じられないよ!
「やっぱり嘘じゃん!!なんでいきなりそんな話すんの!!」
「いたたたたたギブギブ、違うんだ。俺はつきたくて嘘を言ったんじゃな、ちょっとまって!マジ痛いから!!」
擦れた声を絞りだす様にして叫ぶ日比野さん。
具合が悪そうだからって人をからかっていいはずない。もう、頭くる!!
「ドラマも嘘なんだ!」
「それは本当、立花さんも絡んでるんだし。でも水着は嘘な」
にっ、と白い歯を見せられ尚更かちんときた。
開き直れば許してもらえると思ってるの、この人。
こんなに痛い目に会ってるのに何で笑ってられんのよ、馬鹿!
「運転中の暴力はおやめください、お客様。危ないし事故の原因になりますよ」
「うるさい!笑うな、この嘘つき!出っ歯!」
いくら痛い目に会っても笑顔が崩れなかったので、疲れてやめてしまった。
心配して損した・・・無いなら言わないでよ、もう。
「ドラマの方がまだ出来そうだろ。栞菜」
「そ、そんなの・・・!」
言われて考えてみた。
どっちも無理だと思うけど、出来そうなのは・・・
肌を見せなくて済むドラマの方かな。出来るかそうじゃないかは別として。
「でも、やっぱり笑えない。私には」
「無理だって言うのか。そう言って断るのか」
「・・・うん、そうする。もっとちゃんと出来そうな人を代わりに・・・」
「・・・栞菜」
低くなった声が私の言葉を遮る。
名前を呼ぶ時はいつもへらへらしながらだったから、怒られると思った。
怖い、顔が見れない。でも、目線は恐怖で釘付けになって、外せない・・・
恐怖で緩んだ涙腺から涙が漏れて、鼻の辺りがむずむずしていた。