JoiN〜EP.4〜-5
お休みのせいかやたら車が多かった。
もうそろそろ夏休みだし、これからはもっと増えるかも。
家族連れが多い中で、カップルらしい男女連れも見かける。
思わず目を逸らしたらまた隣のうるさい人と目が合っちゃった。うわぁ、絶対話し掛けて・・・
くる、と思ったけど、
道路にはみ出た自転車に乗った人がいたからそっちに気を取られたみたい。
ふう・・・助かった。
「栞菜はそろそろ夏休みだろ?まだだっけ」
やっぱり話し掛けてきたよ。それも、今ちょっと考えた事。
なんかやだなぁ、一瞬でも同じ事を考えたと思うと、頭の中を綺麗に洗い流したくなる。
はいはい、そうです。でもそれがあなたに何の関係が?
「もし水着の撮影の仕事が来たらどうする?」
「へっ、み、水着?!」
海に行こうとか言い出すと思ってたから、いきなりの質問に面食らってしまった。
何のつもりで聞いたか分からず、思わず顔を見つめちゃったけど、日比野さんは笑ってなかった。
「まさかやるの、えっ、いつ。どんなの着るの」
「・・・・・・・・・」
「ちょ、何?!本当にやるの?!ねえ!」
「・・・インパクトが大事だからとかで、大きめの水着じゃないらしい」
さっき迄のふざけた様子は無い。下唇を噛んで、怪訝そうな顔をしてる。
前髪が垂れた目もとは、悔しそうにも、私に対して申し訳無さそうにも見えた。
「う、うそ・・・まじで・・・?無理だよ、私には出来ない。水着なんて無理!」
「そうだよな。肌を晒すんだもんな、カメラの前で」
日比野さんの言葉が胸に突き刺さる。
その傷口に、小さな穴から出ようとするダムの水みたいに、不安や泣きそうな気持ちが押し寄せてきた。
笑うのすら無理なのに、体を見せるなんてもう・・・!
考えるのを繰り返すうちに堪らなくなって見上げた空は、曇っていた。
さっきは青空にくっきりした輪郭が重なった、大きな雲が広がってたのに・・・
ドラマに続いて水着の撮影まで来てしまった。
私は新人だからお仕事を選ぶなんてできっこない。選択する自由なんてあるわけも無かった。
与えられた事を精一杯やりきるのが大事よ、と立花さんに叩かれた肩の痛みを思い出す。
「いつものウソでしょ、日比野さん」
急に言い出すなんておかしいもん。
私を脅かそうとしてるんだ、反応を楽しんでるに決まってる。
日比野さんはそういう人だから、笑いを堪えてるんだ。そう思いたかった。
そう思ったけれど、ドラマの話だって急だった。昨日いきなり電話があってびっくりしたもん。
何の前触れもなく突然私の前に降ってきたんだ。そう、水着の話と同じ様に・・・