JoiN〜EP.4〜-4
こんな調子だから、最初のうちはどう返事したらいいのか分からず、会話が続かなかった。
現場のマネージャーは、仕事柄担当のタレントと顔を合わせる時間が長いから、話せる性格じゃないと結構つらいらしい。
まだコツを掴んだかどうか分からないけれど、会話は続く様になっちゃった。
それが嬉しいのか、日比野さんは話す時にニコニコしててちょっと薄気味が悪い。
「行きたい場所は任せるのか。じゃあ、ドライブデートと洒落込もう」
「任せるって、私をどこか連れてくつもりだったんじゃないの?」
「ん〜〜、決めてはいたが気が変わった。たまには目的を探して過程を楽しむのもいいだろ」
私のカンだけど、たぶんどこに行くかは決めてなかったっぽい。
適当なんだよねこの人。時間にもルーズだし、遅刻しなければいいと思ってるのかも。
お仕事じゃないのに、助手席に座ってるのは、何だか変な感覚だった。
「・・・・・・」
「どうした?俺の横顔に見とれたか。だがな、一番いけてる角度は右斜めからの・・・」
「私服の日比野さんって初めて見ちゃった。大学生みたいだね」
「一昨年まではそうだったがな。なんか、私服だと事務所の人に必ず言われるなぁ」
「大学って、どんな所なの?」
日比野さんは、わざとらしく咳払いをしてから、真剣な顔を見せてきた。
「狩場だ。どこにでも女がいる、だが狩られるだけのシマウマじゃあない。飢えた獣だぜ」
「け、ケモノって・・・そういう言い方はちょっと」
「実際そうだったよ。向こうも狩ろうと牙を剥き出しにしてる。ふっ、懐かしいな。もう遠い過去の様に感じるぜ」
別にそういうのを聞きたかったんじゃない。
進学しようか迷ってて、参考にしたかったのに。この人の頭の中って、それしか無いのかな。
「もはや昔の話だ。栞菜、お前の前ではどんな女だろうと霞んで見える」
「日比野さんって・・・今まで何人の人と付き合ったの?」
別に聞きたくも無いけど流れで聞いてみた。
でもこの人の場合、全く違う話でも同じ方向に流れがいくから同じかもしれない。
まるで方位磁石ね。ずっと北を指したままの・・・
「ちょっと待ってね、数えるからさ」
ちょうど信号に引っ掛かったので指折り数えてたけど
「えーと十、二十・・・ああめんどい!四ケタだ!」
また適当な事を言ってる。
好きな話題なのにさっさと数えるのやめるなんて、本当にどうしようもない。
「嘘つき」
「マジだって。栞菜で丁度四ケタだよ」
「覚えてるならなんで数えたの。息をするみたいに適当な事言うね」
「気持ちは千人目さ。いや、ある意味一人目か。他の女なんか忘れちまったし」
少し頭が痛くなってきたのは、冷房が効きすぎてるだけじゃないと思う。
話すのを止めて窓を見よう。外の景色を見たら頭痛が治まりそうだから。