幻蝶(その1)-8
「いいじゃない…せっかく、こんないいホテルの部屋なんて、ヤスオくんも見たいわよね…」
戸惑うトモユキをラウンジバーに残して、ボクはふたりが宿泊する部屋に亜沙子さんに連れられ
ていく。
ほんとうは、見たくもなかった。ふたりが、今夜抱き合う部屋なんて…。広く優雅なインテリア
の落ち着いた感じの広い部屋だった。窓から宝石のような光の渦が、なぜかボクを笑っているよ
うだった。
「…素敵なお部屋だわ…ベッドも広いし…」
亜沙子さんは、ベッドにからだを投げ出す。胸元から下着が微かにのぞき、短いドレスがめくれ、
パンストに包まれた白い腿が露わになる。ボクはじっとその姿を見つめる。
今夜、ここで亜沙子さんは裸になり、トモユキに抱かれる。胸の息苦しさが、嘔吐物のように咽
喉まで這い上がってきそうだった。亜沙子さんは、どんな喘ぎ声をあげるのだろうか…どんな抱
かれ方をするのだろうか…。
亜沙子さんの性器が、ひらひらと蝶の幻影のようにボクの中で舞う…。
家の影が暗闇の中にまばらに点在している。ここはボクが高校に入る頃に移ってきた家だから、
何の思い出も記憶もない場所だった。荒涼とした荒れ野から吹いてくるような風が頬を撫で上げ
る。ボクは部屋に戻るとアサちゃんをベッドの上に寝かせる。
…今夜は、アサちゃんとボクの初めてのセックスだよ…
ボクはアサちゃんに語りかけるように赤いワンピースを脱がせる。白のブラジャーとパンティ姿
のアサちゃんの柔らかい腿に触れる。ホテルの部屋で見た亜沙子さんの白い腿を頭に描く。
きっと彼女も白い下着に違いないとふと思ってしまう。
ボクはアサちゃんのパンティを膝まで下げる。つるりとした微かな割れ目が露わになる。ボクは
ベッドの上でアサちゃんに寄り添うようにして自分のブリーフを下げる。疼き始めたペニスの幹
を右手で包み込む。
アサちゃんの瞳が、まるで亜沙子さんがボクのペニスを欲しがっているような瞳に見えてくる。
ペニスの先端でアサちゃんの下半身を撫でる。
アサちゃんの肌のどこか冷たい柔らかさがペニスに伝わってくる。亜沙子さんの性器が頭の中で、
蝶のように羽ばたいている。
堅くなってきたペニスの芯にほのかな微熱を感じ始めたとき、亀頭の鈴口に透明の液が涙のよう
に滲み始めていた。
ボクはゆっくりとペニスを右手で包み込み、擦り始めた…。