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JoiN
【コメディ 恋愛小説】

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JoiN〜EP.3〜-1

机に向かい、仕事するふりをしながら栞菜の事を考えていた。
普段はまるで俺に振り向く素振りもないくせに、仕事の時は俺とよく話してくる。
もうこれはどう考えても脈ありだろう。いいや、脈どころか頭の中は俺でいっぱいのはずだ。

今頃授業を受けつつも、気付けばノートに俺の似顔絵を描いてるに違いない。
それを先生に見付かり、誰だと聞かれてしまうんだ。駄目だぞ栞菜、決してばらしちゃならない。
ふっ、そうは言っても恋する乙女には無理な話かもな。よし、言いなさい、どうせなら学校中に言い触らすんだ。

「喜びな日比野!!」
「はい、嬉しいです!栞菜の学校に俺の名前が知れ渡るんですね!」
「何の話よ?栞菜にね、ドラマの話が来たんだよ!」
「ドラマ・・・って、何のドラマですか。ていうかいつ来たんですか?」

詳しく話を聞いたら、今度放送が始まる23時台の放送枠のドラマらしい。
うちの事務所はドラマ方面に強く、それなりに有名な俳優や女優を多く抱えている。
ゆくゆくは栞菜を女優にしたいと立花さんが言ってたが、遂に最初の一歩を踏み出すのか。

「あの子は目に力があるから、見る人を引き付けるのよ。間違いないわ!」
「俺も思います。演技の方は大丈夫なんでしょうかね?」
「それは、本人次第ね。素質がある人もいれば努力で花開く人もいる。人それぞれだから」

大丈夫、かな。
普通の写真撮影とドラマの撮影は似てる様でまるで違うし、表情以外に動きも加わって難しい。

だが何よりも俺が不安なのは、共演者の中にイケてるメンズがいるかどうかだ。
美人の女にまるで興味がない男などいないのと同じで、目移りしないか心配だぜ。

「どんなドラマなんですか?」
「普通の学園ものよ。栞菜は現役の高校生だし、そんなにやりづらくはないと思うわ」
「いえ、そうじゃなくて、どんな人が出るのか・・・例えばその、イケてるメンズとかは・・・」
「うん、出る。売り出し中の新人アイドルも何人か出るみたいよ。私は別に格好いいとは思わないけどね」

な、なんですと!!!
出るんですか、男が!しかも栞菜と同い年の!
格好いいとは思わないって、立花さんと栞菜みたいな若い女じゃ感覚が違うに決まってるじゃないですか!

どうしよう、いくら格好いい俺でも流石に十代の時みたいな中性的な可愛さは残ってないぞ。

「立花さん、キャンセルしましょう。この仕事は栞菜の為になりません」
「言ってる意味が分からないけど、もう断れないよ。それにもとから断るつもりもないし」
「駄目です!まだ栞菜は新人です、それをどこぞの馬の骨に傷物にされたらどうするんですか!!責任もてるんですか?!」
「傷物ってあんた・・・自分が口説いてるの棚に上げて、そっちの方が問題じゃないの。大丈夫よ、あまり出番は無くて現場にいる時間は少ないから」
「決めました!俺、今から栞菜のボディーガードになります。男が近付こうものなら、武力行使で阻止しますから!」
「何を1人で舞い上がってんの。あんたさ、前から思ってたけどその独り善がりなとこ・・・」
「じゃあ栞菜にドラマが決まった事電話しときます!あと、ボディーガードも!」

立花さんは何かを言い掛けたが、目を細めながら眉を上げて「はいはい、任せたよ日比野」とため息混じりに呟いた。
ああやって呆れた顔を、もう何回見てきただろう。言っても無駄な相手に対して、ああいう顔をするのかもな。


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