JoiN〜EP.3〜-4
『そっか、せっかく早く帰れたのに電話しちゃってごめんなさい』
「何を謝る必要がある。さあ言うんだ、俺が待っているあの言葉を、ほら遠慮はいらんぞ」
『でも・・・ごめん、何でもない。ちょっと声が聞きたかっただけだから・・・』
君はアイドル。
そして俺は君のマネージャーだ。だが、それは決して壁にはならない。
愛に壁など無いんだ、好きになる事に罪などありはしない。人を好きになれるのは素晴らしい事なんだぞ。
自分から電話してきたのは気持ちを抑えられないからだろう。
なかなか言えないのは怖いからか?ここまで来ればあともう一歩なんだ。
「いいよ。栞菜が落ち着く迄待ってる。だから、また気持ちの整理がついた時に電話してくれ」
『うう・・・あの、その・・・・・・・・・』
だんだん冷静さを無くしていく栞菜を気に掛けながら、諭す様に話した。
今まで俺に告白してきた女は、大体事前に似た様な行動を取ってきた。
栞菜も、いよいよ墜ちる。俺の物になるんだ。
思えばちっとも楽な道のりじゃあ無かったなぁ。最初はろくに返事すらしなかったからな。
この俺が思わず弱音を吐きそうになった位だ、冗談抜きでかなりの強敵だったぜ。
だが、それももう終わりだ。ようやく報われる日が来るんだ。
止まない雨は無いのと同じで、俺の愛に墜ちない女はいない。またひとつ、輝かしい歴史に女の名前が刻まれる・・・
「大丈夫だよ栞菜。俺はいつでも待ってるからな」
『う、うん、ごめん。ちょっと待ってて、すぐかけ直すね。マネージャーさん、すぐだから』
「日付変わる頃には寝てるから、それまでにはよろしく♪」
最後は優しく囁く様に言い、携帯を枕元に置いた。
よし、よし・・・どんな顔をしている、鏡を見てみるか。
「・・・ふっ、いい顔だな。日比野直行、お前は星を掴んだ顔をしている」
洗面所の鏡には、さっきまでとは見違える程生気が漲っている俺が写っている。
特に目に光が満ちており、見てて眩しい程だった。
長かった・・・
一年間、ずっとこの薄汚れたベッドに1人で眠る夜が続いた。
だが、それも間もなく終わるんだ。俺は生き返る、以前の様な潤いを取り戻すぞ!
それから俺はベッドの上で、全裸のまま正座して電話を待ち続けた。
嬉しさに溢れた気持ちの中で、何か違和感のある部分が微かに混ざっている。
(・・・変だな、何でこんなに待ち遠しいんだろう)
女からの告白待ちなんて、毎日の様に味わってきたじゃないか。
なのに、やけに興奮する様な感覚は、あまり体感した事が無い様に思える。
きっとこんな本気な恋は久々だからかもしれん、そうだ、そうに決まってる。
でも、それにしてはやけに興奮しすぎな気がするな・・・
「!!!」
反射的に電話を握り、開いていた。
今日で二回目、しかも短い時間のうちに立て続けだ。
これが続けば恐らく俺の心臓はパンクするかもしれんぞ。