JoiN〜EP.3〜-2
「もしもし栞菜、お疲れ。俺だけど」
『おはよマネージャーさん。何かやけに嬉しそうじゃない』
「分かるか、そりゃあそうだ。俺は今からお前のボディーガードになるんだからな」
俺にとって、何より栞菜にとっても嬉しい連絡だから、口説くのは適当に切り上げるつもりだ。
早くドラマ出演が決まった事を伝えたい。
『暑さにやられちゃったの、ああいつもの事だっけ』
「栞菜、落ち着いて聞けよ。ドラマに出られるぞ」
『・・・・・・・・・』
「おい栞菜、聞こえたか。もう一度言う、ドラマ出演が決まったんだ」
喜びの返事が待ち遠しいが、受話器の向こうから何も聞こえてこない。
頭が真っ白になってるのか、次の言葉が見つからないのかもしれないな。
『・・・・・・どっきり?』
「がち。がちがち。ほら、夜遅くやってるのがあるだろ、生徒役だってさ」
どっきりだよ残念でした、とふざけるのも悪くないと思ったが、流石に自重すべきだろう。
撮影やらインタビューやらの日々が続いたが、ついに女優デビューだ。やったな。
「詳しい事はまだ俺もよく分からない、近いうちに立花さんから連絡あると思うから」
『まじ?!がち?がちで?!うそっええっ、まじ?!』
取り敢えず連絡だけして電話を切った。
栞菜が急に騒ぎだしたので耳が痛い。あまりの声の大きさに、通話を切っても聞こえてくる様な錯覚を起こしそうだ。
「気が早いねー栞菜も、先の話なのに。日比野もそうだよ、まだ決まったってだけだし、レギュラーなら奇跡かもね」
「だって立花さん、俺の愛する女がブラウン管デビューっすよ!!嬉しいっす!!」
「もうすぐ地デジだけどね・・・でも、嬉しいよね。担当の子がドラマデビューってのは」
栞菜に直接伝えた事で、嬉しさが込み上げてきた。
悪い虫がつかないか不安だったが、今は嬉しさの方が勝っている様だ。
今日は、久々に早く帰れたので受付嬢を食事に誘った。
いい加減に懲りないとこの次からは手で返事しますよ、と平手打ちの素振りを返事代わりに見せられた。
只のはったりでは無いらしく、実際に食らった俳優がいるらしい。
しつこいとはいえ顔が命の芸能人によくそんな真似ができるな。
なかなかなびかない女は好きだが、相手に直接手を出すのはちょっと勘弁して欲しいぜ。
はあーあ、デート出来ないんじゃ早く帰っても仕方ねえや。
そうは思ったが、予定が潰れても早く帰れるのは有り難かった。車を走らせ、駅から離れた場所にあるねぐらに帰る。