君の瞳に恋してる・V-7
「ぼっ、僕とりあえず出ます!」
ガバっと起き上がりカーテンに手をかけると「待って!」と声をかけられた。
「…先生、どう?」
ゆっくり振り向くと、海が先ほどの水着を着て恥ずかしそうに佇んでいた。
胸が真ん中に寄せられ深い谷間が出来ていて、細くくびれた腰、まっすぐに伸びた足がむき出しになっている。
どきんと動悸が激しくなる。
「あ…の…似合っていると思います。でもそれ買うんですか?」
「先生が似合ってるって言ったし、買うつもりだけど…?」
僕たちは狭い試着室の中で向き合っていて、不思議そうな顔をして海がこちらを見る。
「…なんか嫌だな、と…」
「え?」
「だから、そんな下着みたいな姿の海さんを誰かに見られるのが、嫌だなって…」うつむきながら白状した。
独占欲――
このモヤモヤはきっと独占欲。
いい年してみっともないよな、独占したいだなんて…
彼女の中で揺れていても、自分以外の男も海の中に沈んだと思うと黒い感情が湧いていたんだ。
すれ違う男が海を品定めするように見ると、その目を潰したくなる…
僕の海。
僕だけの海。
誰にも触らせたくないし、誰の瞳にも映したくない――
「……先生、嬉しい…」
「え…」見上げると海が満面の笑みで微笑んでいる。
「そんな風に思ってくれて、すごく嬉しい。あたしは先生だけのものだよ?誰に見られたって、あたしが見て欲しいのは先生だけだよ」
「海さん…こんなの、鬱陶しくないですか?」
「先生。あたしだって、同じこと思ってるんだよ?先生の素敵なトコはじめに見つけたのあたしなのに、先生にまとわりつく子に嫉妬したりしてるんだからね!」
「そうだったんですか…」
予想外の答えに胸が温かくなる。
僕だけじゃなかったんだ…
こんな風に思っているのは自分だけかと思ってたけど、違うんだ。
好きになると、誰しも抱く感情なんだ…