JoiN〜EP.2〜-5
(マネージャーの仕事は、支える。タレントやアイドル、芸能人を影でサポートする事だよ)
初めて聞いた時は特に深い意味までは考えなかった。
だけど、仕事中に思い出すと、少しはその意味を考えたくなる。
漠然と答えの様なものが頭に浮かぶけれど、はっきり口では言い表わせないのがもどかしい。
「お願いしまーす!」
「はい!よし、栞菜、出番だぞ。頑張れよ」
栞菜の手をぎゅっと握った。
・・・あれ、抵抗してこないな。これを移動中にやろうものなら、即平手打ちが飛んできそうなのに。
「うん、いってくるね。とびきりの笑顔、見せてあげるから」
俺の手を握り返し、いい顔でカメラの前へ走っていく。
・・・いくら俺だって24時間ひっきりなしに女の事ばかり考えちゃいない。
せめてそのうち1割くらいは頭を切り替え仕事を意識する。今が正にその時だ。
「はい、いきまーす。栞菜ちゃん、いい顔頼むよ!」
漠然とした注文だな。
しかし、見せるべき表情はたったひとつだ。栞菜はきっと分かってるはず・・・・・・
(・・・・・・!!・・・・・・)
意識が遠退いた様に感じて、気が付けばカメラマンが連続でシャッターを切る音が聞こえていた。
我に帰り、ようやく栞菜が笑ったんだと気付く。
まともに見たな、きっと。それで意識が飛んじまったんだ。
頭の中だけ石化させるなんて、栞菜はメデューサみたいだな。
きっとそうに違いないぜ。目があんなに大きいのも説明が付く。
「おつかれさまでしたー♪」
気が付けばもう撮影は終わり、栞菜を家に送る最中だった。
「・・・・・・・・・あの、さ。栞菜」
「なあに?マネージャーさん」
「あ、アイス食べるか?買ってやるけど」
「太るから買い食いは駄目じゃなかったの?いいよ、我慢するから」
「そう、か・・・・・・」
か、会話が続かない。いったいどうしたというんだ、この俺が女と話せないなんて。
結局その日はまともに話せず、栞菜を家に帰してしまった。
す、水族館に連れていくつもりだったのに、いったいどうしたんだよ?!
(うっ、くそ、ダメだぁ、鳴り止まねぇ)
物心ついた時から恋に生きてきたこの俺が、おかしな事になってるぞ。
心臓が痛がってる・・・なのに、早く動いて止まってくれない。
止まれ、止まってくれ!
いやいや、止まったら困るぞ。止まるな。
・・・・・・変だぜ・・・
〜続く〜