JoiN〜EP.2〜-4
「し、しまった!無し、今の無し!きたないぞここで笑うなんて!」
「何の話?とにかく、オッケーしたんでしょ。だからちゃんと家に帰してよね」
知ってるんだな、俺が君のそういうのに騙されやすいというのを。
俺自身はたった今気付いたというのにずるいじゃないか。
「栞菜のお母さんに電話しとくよ。娘さんは今夜お友達の所に泊まるとな」
「もう諦めたら?マネージャーさんてホント諦め悪いよね。なんでそんなしつこいの」
「粘り強いと言ってほしいな。それに俺は、狙った相手は逃がさないのさ」
いい加減相手をするのに疲れたのか、栞菜は窓の外に視線を移してしまった。
なぜしつこいのかって?決まってるだろ、君が俺の運命の女神様だからさ・・・
一目見た時の、心臓を貫かれた様なあの感覚が忘れられない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふぅ〜〜・・・やっぱり笑うのって難しいのかも・・・」
撮影の合間の軽い休憩中、栞菜がぼそりと呟いた。
多少はましになってきたとはいえ、笑顔が硬いんだ。自然な感じじやない。
「楽しい事を妄想してみろ。ほら、例えば俺とのデートとか」
「そんな気分じゃない。急に言われても難しいよ」
こないだは俺のアドバイスで無事に笑顔になれたはずだが・・・二回も同じ手は通用しないのか。
無理も無いかな、新人でまだ十代だから自分の心をコントロールするのは簡単じゃないかもしれない。
「どう?笑えてる?」
口角が引きつりかたかたと震えている。
俺なんかいつもへらへらしてるから笑ってるのが普段の表情みたいなもんだが、他の人は意外とそうじゃない。
だから、笑うとこうして不自然に見えてしまうらしい。
(・・・あれを見せられれば、もっと魅力的に写るはずなんだがな・・・)
俺の意識のスクリーンに、あの笑顔が浮かび上がった。
一番最初に出会った時に見せてくれた、あれだ。
もう何度も目を閉じてスクリーンに描くのを繰り返してきたから、すぐに浮かんでくるぞ。
恐らく栞菜自身は意識してなかったんだろうが、むしろそのおかげで魅力的に見えたのかもしれない。
それに、栞菜には悪いが俺は仕事中はにやにやしっぱなしになってしまう。
だって・・・・・・
「こうかな。眉間の力を抜いた方がいい?」
「そりゃ力は入れない方がいいだろ。うん、さっきより良くなってきたぞ」
移動中は悉く俺の愛を弾き落としてしまう。顔すら見ようともしない、正に鉄そのものだ。
それなのに、こうして仕事の時は俺を頼りにしてくれるから。
ふっ、可愛い奴め。俺がいなくちゃ不安で仕方ないんだろ?
いくら普段は素っ気なく見せたってな、こういう時に本当の気持ちが出ちまうんだよ。
「・・・ふへっ、ふふふ」
「なんで変な声出すんだよ。今の表情は完璧だったのに、それで台無しじゃん」
これが、立花さんの言う¨仕事¨ってやつなのかな。
あの人は俺に限らずよく周りの人に言ってる事があった。