教師の情事(5) -2
日曜日。強豪校とのサッカーの試合は2-2で引き分けだった。途中から選手交代で出場した
正之の果敢な守備により何とか追加点は入れられずに済んだ。
強豪校相手に引き分けだったのだからずまずの成績だった。
「よく頑張ったな、野村!」
「いえいえ、みんなのおかげですよ!」
顧問で監督の畑中が正之に声をかける。応援席では陸上部のメンバーがサッカー部の
イレブンに祝福の声を上げる。佐和子は椅子に座りながら正之のプレーを見ていた。
その姿を正之は見ていた。
(佐和子、見ているかい?俺やったよ!)
正之が佐和子にほほ笑むように見る。
しかし佐和子はやさしくも弱弱しく微笑み返すだけだった。
そしてその隣には拍手を送る順子の姿に心苦しくも思えた。
正之が家に帰ってくるや否や正之の母親からいきなり怒鳴られた。
「正之、あなた年上の女と街で歩いてたんだって!?どういう事?」
正之は呆気に取られた。一体何のことなのか?
「いや・・・どういう事?よく話が読めないんだけど。」
「さっきS中学の萩原先生から電話がかかってきたのよ!アンタが年上の女と歩いているのを見たって!」
「ちょっと待ってくれよ。何の話だよ?マジで身に覚えがないんだけど。」
「萩原先生が間違いを言うわけがないでしょう。」
「何だよ!俺の言うことは信じなくて中学の教師の言うことは信じられるのかよ!」
正之は思わず怒りを爆発させた。何で親はこうも息子の言うことを信じられないのか。
口論になっているところへ父親がやってきた。
「たとえお前にそんな事がなくても萩原先生が誤解されるような事をしていたのは確かだな。」
「だから俺は知らない・・・。」
「部活は辞めてもらう。勉強だけに集中しろ!外出も門限をつける。いいな!」
「何を言ってんだよ。散々一ランクしたの学校に行かせたくせに・・・。」
しかし正之が最後まで言おうとしたのを遮って父親はこうも告げた。
「口答えをするな!!」
正之は愕然とした。天国から地獄に突き落とされた気分になった。
これでは佐和子にも会えなくなる。楽しい学校生活も送れなくなる。
(萩原の奴、何で・・・?須藤か?畜生・・・。)
しかし正之にはどうする事も出来なかった。ただ親の命令に従うだけしか出来なかったのだ。
次の日W高に登校してきた正之の顔はとても暗かった。それは今にも泣き出しそうな顔だった。
教室に入ってきて順子があいさつする。
「野村おはよう。」
しかし正之はあいさつをし返さずにそのまま机に座る。
その後畑中が教室に入ってきて授業を始める号令がクラス委員に告げられる。
「起立!礼!」
正之は弱弱しく立ちあがって弱弱しく礼をする。その姿は畑中の目にも飛び込んだ。
(野村、どうしたんだ・・・?昨日の試合では褒められていたのに。)
授業が終わると正之は畑中のところまで歩いてきた。