フォール-2
中学に進学してから、柚は少し変わってしまった。
普通に野球部に入り、朝早くから練習にいく様になったのが原因かもしれない。
夏になったら私達三人に決まってプールについてきたのに、その年からは出来なくなってしまったのだ。
でも、中学生にもなれば男の子は女の子複数と水遊びしなくなると思う。
だから・・・野球部に入らなくても、いつかはこうなってたのかもしれない。
「流れるプールいこっか」
「いこっ。何周できるか競争しようよ!」
はしゃいでいる二人を見ていると、なんだか複雑な気分になってしまう。
それとなく柚がいないね、みたいに切り出してみたら
「・・・あ、そういえば今年はついてこないね」
「ていうか、さっき杏子のうち行ったら居なかったね。友達と遊んでんの?」
あまり興味が無さそうだった。
言ってないとはいえ、柚が野球部員だってのも知らなかったみたい。
つい去年か一昨年まで、柚が飛び込んで上がってこないのを心配してたのに。
やっぱり、他人の弟だったら冷めやすいのか、興味が続かないのかもしれない。
たかがそれくらいで友達に幻滅したりはしないよ。
「その前にさ、暑いからかき氷にしよう。はいダッシュ!汗かく前に食べよう!」
「待ってよ由美、いこ杏子。遅れたらなんか悔しいから」
「う、うんっ」
うまく言えないけど、
これが、大人になることなのかなって、思った。
(中学になったら新しい出会いもあって、でもお別れもあるよ。その繰り返しが人生を形にする)
痩せこけた校長先生が卒業式で言ってたのを思い出した。
私の人生は始まったばかりだから、お別れなんて無い。
何の根拠も無くそう信じて疑わなかった・・・
「んー、きぃ〜んてしてる。あっ痛い!虫歯!」
「やっぱ夏はこれでしょ・・・あっあっ!痛い痛い、私も虫歯〜!」
「二人とも・・・痛たたたた、私も・・・!」
虫歯という同じ痛みを持つ私達の友情が、簡単に無くなるはずがないもんね。
私は勝手に信じて1人で嬉しくなっていた。
飛び込み台を何気なく見てみたら、誰も上がる人が居なかった。
ちょうど一昨年辺りは賑わってたのに、いったいどうしちゃったんだろう。
私の知る限りじゃあそこで事故なんて起こらなかったのに、誰も寄り付かなくなってた。
『ごめん、その日無理。映画行くんだ』
『あっごめん、買い物行く予定でさ・・・また今度ね杏子』
何となく、いやもう完璧こうなるのは分かってた。
それでも一縷の望みをかけて電話したけど玉砕。
高校まで一緒になれたのに、私達の絆はここで終わりなの?!
気を遣ったのか二人とも¨彼氏¨とは言わなかった。
でもね、それが余計に友人の胸を抉る結果に繋がるんだよ、分かってるのか?!
でも、そんなに落胆しなくても良かったりする。
私にだって一緒にプールに行く相手がいるんだもんね。
高校になって始めたバイト先の先輩に誘われちゃったの。
初めて男の人に水着を見せるから今から緊張してます。
・・・それとは別に、友達同士でも行きたかったんだけど、この際後回しでいいかも。