唯高帰宅部茜色同好会!(第三章)-1
「あーちぃー…」
今年の夏は、割と早く訪れた。
まだ六月なのだが、雨雲は行く場所を間違ったんじゃないかと思う。
そう、梅雨が来ないのだ。
「…今月、何回雨降った?」
ユーリも汗を拭いながらグラウンドに立っている。
今日も天気は雲一つない快晴で、地面からジリジリという音が聞こえてきそうなほどの夏日だった。
「覚えてねー」
キスケはへたり込んでいる。
教室にはエアコンが完備されているが、外にいてはどうしようもない。
「こんなときに体育だもんな」
俺達はこんなでも特進クラスなので、他のクラスよりも体育の授業が少ない。
俺達三人はどちらかと言えばスポーツができる方だから気分転換という意味では体育があるだけでもありがたいが、この炎天下だと流石にやる気も削がれる。
「でもよ、いざ教室に戻ると、女子とかガリ勉派のやつらは寒いーだの、体調崩すーだの言って冷房嫌がるんだぜ?たまんねー」
「まあ女はともかく、男は入学したときから受験に命かけてるような奴らの集まりだからな」
「…俺、なんで特進にしたんだろうな。有名大学になんか興味ないのに」
ユーリはそう言って溜め息をついた。
「そりゃあ、入試の成績よかったからだろ。俺だって頭いいわけじゃないのに、それでこっちに推薦されたんだから」
「……今気付いたが、なんでキスケは特進にいられるんだ?」
ユーリが訝しげな目をキスケに向けた。
「俺は受験のとき、アッキュとサキに死ぬほど勉強させられたからなー。それでたまたま点がよかったからじゃねーかなー」
「……お前が泣きそうになりながら、一緒の高校行きたいって言うから」
「言ったけど泣きそうになってねー!」
「大声出すな暑くなる」
「……ごめんなさい」
キスケはグローブを手にはめ直しながら空を見上げた。
「……ほらキスケ」
俺は握っていたボールをキスケに投げる。
「ユーリ」
キスケはボールを捕ると、素早くユーリに回す。
俺達はそんなことを言い合いながら、三角キャッチボールをだらだらと続けていた。
「そういや来週の球技大会、男子は野球だったな」