唯高帰宅部茜色同好会!(第三章)-6
「…見てろよ、お手本するから」
俺はコインを入れると、バットを構えた。
まあ俺も偉そうに教えてはいるがチームでやってたわけじゃないからな…
ボールがマシンから発射されると、軽くステップを踏んで綺麗に打ち返した。
カァンと乾いた音が鳴り、ボールは飛んでいった。
「おっせー…でもこんなもんか?」
さっきユーリも言ったように、これくらいがちょうどいいかもしれない。
「おおー」
「すごいわね」
「さすがは男子ですね」
三人も驚いているようだ。
山なりにも見えるこれくらいの球速なら、俺でも格好がついたらしい。
俺はそのまま続けて飛んでくるボールを小気味よく打ち返していった。
「…ふう、真似して足動かさなくてもいいから、とにかくボールをよく見て、怖がらずに振ってみな」
一回分のバッティングを終えてからそう言うと、三人は力強く頷いてそれぞれバッティングを始めた。
「どぅおりゃああああ!」
マリィは叫びながら力一杯スイングしているが、あまり当たらない。
「…ほわぁ」
サキはスイングが遅すぎてかすりもしていなかった。
「……」
カァン!といい音で外野付近まで飛ばしているのはアイサだった。
そして三人が一端終わって出てくる。
「難しいわね…当てるのが精一杯」
「当たるだけいいよー」
「マリィは力を抜け。ただ当てるだけでも飛ぶから。サキはちょっと早めにバットを振ったほうがいい」
「……剣道と通ずる所がありますね。胴をうまく決めることができれば打てます」
…いやいや。
まあよく当たってはいたが。
と、ここで俺は気付いた。
「って、俺は何インストラクター気取ってんだ!俺も練習するから!お前ら気をつけてやれよ!」
慌てて俺もユーリの隣に入りバッティングを始めた。
やはり明日は速くてもこれくらいか。
なんというか、こんなことやってると明日が余計に楽しみになってきた。
俺はにやけるのを堪えながらバットをスイングし続けた。
「やっぱりスポーツしてる男子ってかっこいいわね」
「……はい」
「アッキュン、頑張れー」
そうしてその日は夕暮れまで汗を流してから、それぞれ帰宅した。
そして翌日、球技大会の日を迎えた。