唯高帰宅部茜色同好会!(第三章)-17
五回表の守備は、とにかく全員で頑張った。
野球が苦手なやつも、やる気がなかったやつもボールを懸命に追いかけて、必死になっていた。
だがそううまくはいかず、相手の経験者二人にそれぞれ長打を打たれてしまった。
それでもどうにかそこで後続を切り、二点ビハインドで守備を終えることができた。
「はぁ…はぁ…みんなナイスガッツだ」
ベンチに戻ると、皆顔つきが違っていた。
これならどうにかなるかもしれない。
最後の攻撃、得点は六対四。
八番打者からの攻撃だ。
パァン!
「ストライク!バッターアウト!」
凡退した八番は、ぐったりした様子でベンチに戻ってきた。
「ドンマイ!」
「惜しかったぜ!」
打てなくても、精一杯バットを振っていたんだ。
カァン…
九番打者は、打ち返したものの、投手への小フライとなった。
「よく当てたよ!」
「うんうん!」
今までしゃべることのなかったやつも、励ましの言葉をかけている。
最後の最後に、俺達は一丸となっていた。
だが、ツーアウト。
あと一人で試合終了だ。
「……絶対に出るからな!」
ユーリ。
ここまで打ててはいなかったが、必ずやってくれる。
「頼むぞ!ユーリ!」
全員が声援を送っている。
「ユーリ!打って下さい!」
アイサが観客席から叫んだ。
サキとマリィは手を握り合わせて祈っている。
「……絶対に!」
キィン…
ユーリのバットから放たれた音は、一際甲高いものだった。
ボテボテのサードゴロ。
真正面だということで、サードも無難な捕球を見せて一塁へ送球した。
「うおおお!」
普段は物静かなユーリが叫びながら一塁を駆け抜けた。
微妙な判定だと思う。