唯高帰宅部茜色同好会!(第三章)-15
「…さぁこいよ」
打席でじっと投手の顔を見つめる。
スパァン!
今では聞き慣れた音を聞くと、すぐに審判のストライクコールが耳に入った。
見送った。
というより、手がでなかった。
「……くっ」
落ち着け!
転がすだけなんだよ!
投手の後ろまで転がせば何かが起きるんだ!
怖がるな!!
カァン!
金属バットの音が聞こえたときにはもう、一塁を駆け抜けることだけを考えた。
「…どうなった…?」
「アッキュ!回れ!」
チラリと打球を探した瞬間、キスケの叫び声が聞こえてとっさにベースの角を蹴った。
体が二塁に向いたとき、ようやく俺は打ったボールを確認した。
無我夢中で打ったボールは、ライナーでサードの頭上を抜いたようだった。
そのままレフトがボールをグラブに収めたと同時に、俺は二塁にたどり着いたのだった。
「っしゃあ!」
思わず塁上でガッツポーズしてしまった。
周囲からすれば、たかがやる気のない人間ばかりの球技大会、それも一回戦なのだ。
だが、茜色メンバーにだけは、しっかり伝わっていると思う。
この喜びが。
「アッキュー!いいわよー!」
「やったー!」
「凄いですアッキュ!」
観客席から歓声が沸き起こる。
たかが三人ばかりの応援団。
でも彼女達はすごく楽しんでくれているのだろう。
仲間ってすごいな。
「キスケ!頼むぞ!」
打席に立ったキスケに大きな声をかけた。
キスケはここからでもよくわかる笑顔を見せた。
キン!
キスケの放った打球は若干ポテンヒット気味だったが、センターはキャッチできなかった。
それを見て俺は三塁を蹴った。
ボールは返ってくることなく二点目が入る。