唯高帰宅部茜色同好会!(第三章)-13
「ど、どうしたんだアイサ…」
「……はぁ、はぁ、アッキュ」
ベンチに戻ると、アイサが肩で息をしながらそこに立っていた。
「なんだよアイサ、告白か?」
「ち、違います!」
キスケはそう茶化したが、アイサは激しく否定した。
そりゃそうだ。こんなタイミングでそんなのあるわけない。
「…アッキュがきっと怪我しているだろうと思いまして…救護テントから救急箱をお借りしてきました」
そう言われて膝を見ると、たしかに擦りむいて血が出ていた。
「あ、ああ、確かに怪我してるけど大丈夫だ」
「駄目です、座って下さい。私が治療しますから」
「…でも俺、すぐ打席なんだけど」
そう言ってバッターボックスの方を親指で指す。
するとアイサはユーリの方を見た。
「…ユーリ、申し訳ありませんが審判の先生に治療の時間をもらってきて頂いては…」
いや、ほんとそこまでしなくていいぞ…
「……ああ」
だが、俺がそう言う前にユーリが返事をするとそのまま駆け足で審判の元に向かっていった。
ユーリ、なんだか暗い顔だったような。
「ではアッキュ、座って下さい」
「あ…ああ」
仕方なくベンチに座ると、アイサは膝をついてガーゼに消毒薬を染み込ませ始めた。
「少し痛いかもしれませんが失礼致します」
「……いてっ」
傷口がじくじくと痛み熱くなる。
「アッキュ、先程のプレーは素晴らしかったです…」
「…ありがとな」
頼む、足元から上目遣いで微笑まないでくれ…
意識しなくてもドキドキするだろ…
「…これで終わりです、私たちも諦めないで応援しますから、頑張って下さいね」
「……おう、元気もらった」
俺は動揺を隠しながらゆっくり立ち上がると、バットを担いで打席に向かった。
ここで絶対に出る。