唯高帰宅部茜色同好会!(第三章)-12
キィン!
相手の放った打球は平凡なセカンドゴロだったにも関わらず、ライトまで抜けていった。
セカンドと隣のポジションにいるとはいえ、流石にボールをとることはできない。
試合は進み、現在、四回表で既に得点は四対一。
このままじゃ勝つどころか活躍すらできずに終わる。
「……」
汗を拭いながら、ちらりと観客席を見た。
こんなに暑いのに、サキとマリィとアイサは最前列で応援してくれている。
いいとこ見せてやりたいな。
カァン!
次の相手打者が打ち上げたボールは、ふらふらと再びセカンドに。
どうせ捕れないだろうと判断した一塁ランナーは既に二塁へ到達しそうな勢いで駆け抜けている。
それを見て、俺は思わず走り出した。
「どいてくれ!!」
俺が叫ぶとセカンドは驚いてその場を離れた。
「お…らぁっ!!」
乾いた砂のグラウンドだということなど構わずに、俺はボール目掛けて飛びついた。
捕った…!
飛びついた体制から油断せずにすぐさまファーストへボールを投げる。
少々逸れたが、ファーストは経験者なので難なく捕ってくれた。
ランナーは戻れずにダブルプレーとなり、なんとか無失点でチェンジにできた。
「うおおお!アッキュー!」
立ち上がったところにキスケが飛び付いてくる。
「ばか!やめろ!」
「すごいなアッキュ」
ユーリもベンチではなくこちらに向かってきた。
「チェンジだ。まだ諦めねーぞ」
「おう!」
「ああ!」
三人で笑いながら意気揚々とベンチへ戻った。