恋を知りたい-8
「…な、何?」
「別に。」
意味ありげな笑みを浮かべて、彼は教室から出て行った。
なんだかもやもやした気分になり、とりあえず自分の席に座ろうとすると、椅子の端から滑って床に尻餅をついてしまった。
「いた…」
起き上がろうとすると、今度は机ごと前に倒れてしまった。
「あ、あれ…」
どたどたと歩くけれど、いつも以上にうまく動けない。
なんで、なんで…
なんでこんなにふにゃふにゃしちゃうんだろ。
情けない気分。
私の企みは、思っていたよりもずっと、私を動揺させているんだ…。
「…あーあ。」
誰もいない教室に、私の声が響く。
…別に好きになってもらいたいわけじゃなかった。
振り向いてもらえるなんて思ってないから。
だって、先生は先生だもん。
先生は先生、なのに…
私は、なぜだか痛くてたまらない胸の真ん中を、ぎゅっと押さえる。
先生のあのときのキスは、きっとただの気まぐれだった。
…でも、そんなの仕方ない。
だって、先生だから。
だけど生徒なのに私は…
…私はやっぱり、先生がすごく好きなんだ…。