恋を知りたい-7
…こんなに近くで先生の顔を見つめ放題、なんて、もう二度とないかも…
私は相手が目を閉じているのを良いことに、じろじろと観察した。
先生の伏せたまつげを見て、呼吸を感じて、私は…---
---そっと、唇を重ねた。
………あっ…
…くっつい、ちゃった……。
私が、自分でしたくせにびっくりして唇を震わせたのと同時に、先生が驚いて目を開けた。
「………あ、あの…」
「畑本…?」
私は混乱でぱくぱくと口を動かす。
「あの……ま、まだ一分経ってないです…っ」
先生の言葉を聞かないうちに---私は走って逃げた。
ドアを閉めたかも分からないくらい必死で走って、教室に戻ってきた。
「---…はぁっ、は…っ…」
今日は随分走ってるなぁ。
苦笑が漏れそうになる前に目の前が滲んだ。
…私…馬鹿みたい。
先生の心には特別な人がいるから、だから、先生を忘れようと思ったのに…
キスって…思っていたのと全然違ったなぁ。
少女漫画みたいにキラキラしてないし、レモン味なんてしない。
でも…確実に、先生に触れたことを感じた。
ただ触れただけなのに、渇いた先生の唇に、もっとくっついていたいって思ってしまった。
先生がそこにいるってことを強く感じて。
すごくリアルで。
きっともっと想いは強くなって、もっともっと忘れられなくなってしまった。
迷惑だっただろうな。
先生、私を嫌いになったかな。
いや、きっと…何とも思ってない、よね。
…何やっているんだろう。
先生は私のこと、生徒だとしか思ってないのに…---。
涙がこぼれそうになったとき、突然目の前に見慣れた鞄が現れた。
いつも通学時に抱えている、紺の鞄。
あ、私の…
「忘れ物。」
「あ、ありがとう…」
私が受け取ったあとも、竹田君はこちらを観察するように見ている。