夏の怖い話-2
おかしい、絶対におかしい。
怖くて見に行くことも出来ず、かといってこのままジッと待っているのも怖すぎる。
静まり返った暗闇に、なにやらモヤッとした霧みたいなものも出てきている。
この場を一刻も早く去りたい……。
彼女は、我慢できずにとうとう警察へ電話した。
もしA君が悪ふざけしてるだけなら、今日限りで絶交しようと思った。
田舎の山奥にある墓地。
早々に警察が来ることはなく、その間も彼女は恐怖に身を震わせていた。
強い風が吹いているのか、ときおりユサユサ車が揺れる。
一瞬、A君がいたずらしているのかも……とも思ったが、怖くて確認することが出来ない。
車の不可解な揺れは数分ほどつづいた。
電話してから20分後にようやく警察が到着した。
彼女はすぐに車をおり、泣きながらパトカーのほうへ走った。
怯えている彼女をパトカーに乗せ、事情を聞く警察官。
なんらかの事件に巻き込まれたのかもしれない―――そう考えた警察官が、パトカーを静かにトイレへと近づけていく。
一人の警察官がパトカーを降り、ゆっくりとトイレ内へ入っていった。
が、その警察官はすぐに物凄い形相で戻ってきた。
そして、慌てた様子で無線連絡し、応援を要請した。
警察官の尋常ならぬ様子に、彼女は怯えながら聞いてみた。
「あ、あの……A君はいたんですか?」
「A君かどうかは分かりませんが……」
「ど、どうしたんですか? A、A君は?」
「人間のものかどうか分かりませんが、トイレの個室に、バラバラにされた肉塊が山積みされてるんですよ……」
それを聞いた瞬間、彼女は失神した。
後日、彼女は驚愕の話を警察から聞いた。
「A君の身体は、なにかナタのようなもの切断されていました。おそらく、トイレに入ってすぐ殺されたんでしょう。それにしても、あなたまで犠牲にならなくてよかった」
「そ、それって、どういう意味でしょう?」
「あなたが乗っていた車に、手形の血痕がいたるところに付いてたんですよ……」