たとえばこんな恋の話-1
夏の蒸し暑い夜。
宇都宮 崇(タカシ)は酔っ払っていた。
金曜のアフターファイブ。会社の同じ課の連中と連れ立って終電ギリギリまで飲んでいた。
地元に着いたがタクシー待ちの長蛇の列に嫌気がさし徒歩40分の道のりをフラフラ歩いてた。
飲みすぎたなあ…気持ちわり…あ、そういや携帯鳴ってたな。
携帯をパチンと開くと、新着メールが1通。
『タカお疲れ。明日は何か予定ある?タカの家行ってイイ?2週間も会えなくてさみしいよう』
大学時代からの可愛い彼女からのメールだ。
仕事が詰まっていて平日は会えなくて、休みの日もお互いタイミングが悪くご無沙汰していた。
『オッケ!麻耶に会えないから2週間も精子ためちゃったよ↓早く麻耶の中に出したい♪』
と前も見ないで酔った勢いで阿呆な文を作成していると、ドンっと人にぶつかった。
「い゛って!!」
見るとセーラー服姿の女の子が驚愕の眼差しをこちらに向けながらすっ転んでいる。
こんな夜中に制服かよ。つか俺の母校の制服じゃん。
顔をまじまじ見ると、16、7歳の目鼻立ちのはっきりした綺麗な女の子だった。
お…可愛い♪…っといけない。
「悪い。前見てなかったんだ。大丈夫か?」
と、手を差し出す。
女の子が俺の顔と手を交互に見ながらつぶやいた。
「あんた…あたしが見えるの?」
「は?」
「あんたアタシが見えるのかって聞いてんの!!」
「あんたあんたってお前、年上に向かってなんてクチ聞くんだよ。しかもワケ分かんない事を…」
女の子は口をパクパクさせて、神妙な面持ちになりながら口を開いた。
「ねえ、あたし、ユウレイだよ?」
「はあっ!?」
この美少女は何言ってる?どう見たって俺好みのカワイ子ちゃんじゃねーか。
足も生えてるし、おでこに例の三角のもしてないし、生身の人間以外のナニモノでもない。
「お前なあ…大人をからからかうんじゃねえ。女子高生の変なお遊びに付き合うほどオジサンは暇じゃないのっ!」
出してた手を引っ込めて歩き始める。
「待って!待って!ホントよ!!証拠もあるんだから!!」
「あのな〜…」言いながら振り返ると、女の子は必死の形相でこっちを見てた。思わず口をつぐむ。
「これ」そう言って手を差し出してきた。「さわって」
「俺がさわった途端キャー痴漢!とか言うんじゃねえだろうな」
瞳に力を込めて頭を横に振る。