君に誓う、貴方に誓う-1
「これから、残された時間を共に生きよう」
琥珀色の瞳を細めて、彼はそう告げた。差し出された彼の大きな右手に左手を乗せれば、優しく握られる。
「神に誓うわけじゃない」
彼に誘われやって来た教会のステンドグラスに象られた十字架を背に、彼は笑って罰当たりなことを言ってみせた。
「俺は君に誓うんだ。神様はその証人。…………永遠に君だけを愛すると誓うよ。君の背負うもの全て、共に背負う。だから、君も俺だけを愛すると誓って」
真摯な瞳と迷いのない口調でそう言われて、私も小さく頷いて、口を開いた。
「…………私も、……あなただけを……愛すると、誓います……」
今まで一度も言ったことのない言葉を口にするのはとても気恥ずかしかったけれど、ちゃんと瞳を見て答えなければいけないのは解っていた。だから、たどたどしくなってしまったけれど、ちゃんと返せた。
彼は嬉しそうに微笑むと同時に、左手の指にひんやりとしたものが嵌められた。思わず、手を引きまじまじと見入ってしまう。
よく見るとステンドグラスの光を跳ね返して、キラキラと輝く銀色の指輪が薬指に在った。
「勿論、俺のもあるから。君が嵌めて?」
そう言いながら、彼は左手を私に差し出した。その手を右手の上に重ね、彼から手渡された銀の輪を薬指へと滑らせた。
「これで、俺たちは夫婦になった。安易なものだろう? 書面上の手続きも簡単なものだけど、後でしないとね?」
「……うん…」
彼は優しい手つきで私の前髪を撫でる。
「安易で簡単な儀式で“夫婦”になれたけど、それが一番重要なんだよ」
その言葉の意味がよく解らなくて首を捻ると、彼は再び目を細めて微笑(わら)う。