君に誓う、貴方に誓う-2
「その儀式を踏むことで、自分が本当にそうなりたいのか、考えるきっかけになる。…………俺の“妻”になることに迷いはない? この誓いは今なら無かったことに出来るんだよ。でも、書類でしてしまえば“無かったこと”には出来ないから」
変わらぬ口振りで放たれる彼の言葉に、胸に鈍い痛みが走った。
「……何で…っ」
反論しようと口を開くけれど、言葉よりも嗚咽が出てきて、瞼が震える。
「俺と共に生きるってことは、俺の家に縛られるってことだろう? あの家で生き続けることは君にとって辛いことじゃない……?」
息が上がってしまって、声が出ない。だから、彼の言葉を否定するために、何度も首を横に振り続けた。
「本当に?」
「っ……貴方が居てくれればっ、……大丈夫…つら、くない……」
視界は滲み、彼の黒い髪も琥珀色の瞳も輪郭を失っていて、そんな世界を見せる瞳から熱いものが流れた。
「君にとって、あの家は針のムシロだ。だから、せめて俺と共に居る時間だけでも、君が幸せだと笑えるように……死の間際に“幸せだった”と言える様に……君を守るよ」
彼の真摯な言葉に更に目は熱くなり、口は呼吸しか出来なくなってしまって。何も返せない私はただ、小さな嗚咽と共に涙を流すことしか出来なかった。すると、前髪を撫でていた彼の手がゆっくりと頬に降りてくる。ゆっくりと彼の指が零れ落ちた涙の痕を拭い取ると、再び左手を握る。
「……本当に……可愛いな。もう離してあげないから。どれだけ嫌だと訴えても離れることは赦さないから。永遠に俺だけのものだよ」
そう言って、私の手を口元に運ぶと銀色のリングに口付けを落とした。
これから二人で進む道が苦しくても、辛くても構わない。私は貴方が居れば幸せだから。いままでもそうだったように、これからもずっと―――