邪愁(その3)-6
20xx年…月…日 南米…州
「…ダンナ、いい女でしょう…白い肌と体つきも、三十五歳にしては申し分ないとおもいますよ
…もちろん、薬漬けにしています…
…それに、見てくださいよ、あそこにしたピアス…かわいい女だと思いませんか…あそこは少し
色があせてますが、最高にいいものもっていますよ…」
男は、湿原の湖畔にとめたトラックの荷台に積んだ錆びた檻の中の女を覗き込む。
虚ろな瞳をした全裸の女は、鎖のついた首輪をし、すらりと伸びた脚を、立て膝にかかえるよう
に身を縮めていた。
「ほら、脚を開いてみろ…ご主人様にあそこを見てもらうのだ」
家畜小屋の男は薄笑いを浮かべながら、檻の格子の間から、小枝の先で女のむっちりとした内腿
にふれる。女は湿った濃艶な陰毛に覆われた陰部をゆっくりと言われるままに開く。
葉巻を咥えたもうひとりの赤いシャツを着た大柄の男は、女の陰部をのぞき込み、満足するよう
に頷く。
家畜小屋の男は、檻の中の女の陰部割れ目を小枝の先で撫であげ、弄くりまわす。淫唇の肉片に
キラリと光る銀色のラビアピアスが、女の蜜液でぬるぬると濡れていた。
「いつものヤクと交換ということで…もちろん、だんなの趣味にあうように調教しています…」
大柄の男は、地面に落とした葉巻を足で踏み消すと、女を入れた檻を積んだトラックの運転席に
乗り込む。そして、家畜小屋の男にずしりとした革袋を渡すと茜色に染まった夕闇の密林の中に
消えていった。
…嫉妬と虚栄、そして欺瞞に充たされた愛欲に溺れる女ほど愚かな女はいない。
それでも、愛欲に充たされることのない女は、このラビアピアスに夢をみる。決して気がつくこ
とのなかった純潔と無垢に充たされた至福の性の悦びを得るために…。
家畜小屋の男は、泥色に染まった湿原の湖の表面に、ゆるやかにさざ波がたつのを、ため息を
つきながら、いつまでもじっと眺め続けていた。