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非常シキなカンケー
【幼馴染 恋愛小説】

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非常シキなカンケー-1

 私の名前は井上胡桃。
 私立霧原高校に通う十七歳の女子高校生なのだ。
 ファッション誌のグラビアを真似たセミロングと学年主任ににらまれない程度の控えめな化粧。目はちょっと細めの冷めたもの。鼻は右のほうから見れば高く見える。ほっぺたは聞いた話しだと嬉しいときに膨らむらしい。スタイルは自分視点なら、そこそこイイオンナ。普段は友達とおしゃべりしたり、部活したりのどこにでもいる子なんだ。
 ただ、たまにそうじゃなくなるときがあるの。
 それは……、
「皆が中学の頃に勉強したと思うけど、解の公式は三角関数でも似たようなのが出てくるんだ。少し復習を兼ねて……」
 今は授業中。
 黒板では竹川秋吉が粉の飛ばないチョークを振るっている。
 んー……、数学の授業は苦手。
 どうしても、こう……、
「昔は僕も円周率を五十桁ぐらいまで暗記してたんだ。でも、隣のクラスの奴でもっと言える奴が居たんだ」
 復習の話はいつの間にか逸れ、なにやら秋吉の思い出話になっていた。
 もともと私達のクラスは文系だし、受験でも国公立を受けない子には関係ない。面倒な授業よりもこの無駄話のほうがあしらいやすいし、本気組は隠れてシャープペンを走らせている。
「ためしにそいつの暗唱を聞いてみたんだ。そしたら最初の三桁以外は全部でたらめだったんだよ」
 何人かの生徒は気を遣ってなのか愛想笑いを浮かべている。なんだか見ていると気の毒になる。
 両方とも。
「でもさ、こういうのって皆の生活の中でも似たようなことがあるよね? この前なんだけどすごい数のメンバーがいるアイドルグループがあるじゃない? 知り合いとでどっちが流行に敏感かってことで、何人言えるか勝負したんだ。当然僕は負けたけど、そのとき、彼女が言ったメンバーは皆でたらめでさ……」
「えー!」
 クラスの端っこ、窓際の席で女子の一人が声を上げた。
「先生って彼女いたんだ……、信じられない……」
「え? いや、彼女っていうか、その子は女の子だから……」
 よしておけばいいのに、自分からボロを出す秋吉。
 何が女の子よ。女性って言うべきじゃないの?
「先生ロリコン?」
「やべーよ、センセ、それはやばいって!」
 男子の一人が余計なことを言い出したら、さらに別のが食いついた。
 まったく、どうしてこう、静に授業ができないのかしら……。
「いや、ロリコンって、僕は別にそういうことを……」
 大学を出てすぐに教師になったのはいいけど、やっぱり大人としての威厳がないせいで舐められっぱなし。
 授業は脱線したら冷やかされてあしらわれてキンコンカンコンってな具合。
 別に単位認定さえしてもらえればそれでいいけど、でもなんていうか……、ちょっとムカツクわ……。
「先生、授業になりません……。皆も静にしてあげてよ。来年受験控えてる子もいるんだから」
 私は手を上げると同時に静かに言った。
 にやけていた男子達は「やべっ」と小さく舌打ちして肩をすくめる。別に私は特別な力があるわけじゃないけど、皆よくしたがってくれる。
 多分、学園祭の実行委員や体育際の実行委員、それに修学旅行の委員を兼任しているからその影響を恐れてのことだと思う。
 そうよね。学校生活の楽しみのいくつかが私の采配一つで錆色に変えられてしまうんだから、逆らうはずが無いわよね……。
「ああ、ごめん。胡桃……委員長にはいつも迷惑をかけるね。あはは……」
 乾いた笑いの後、秋吉は少し悲しそうになっていた。
 ちょっと言い過ぎたかもしれない。
 でもいい。
 ちょっとムカついてたし。


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