恋愛下手な俺。-1
「おっはよー!」
バス停へ向かう道を哲と並んで歩いていると、後ろから聞き慣れた声がした。
「おー美佳、はよー。」
あくびまじりに、哲が言う。
美佳は相変わらず短いスカートをひらひらとさせて、スラっとした太ももを見え隠れさせていた。
この太もも、俺や哲の前だけならいいのだが、美佳は高校の野郎どもにも惜しみもなく披露する。
なんていうか…ちょっと、むかつく。
けどそんなこと、本人に言えるわけもなくて。
「ボーッとしてんな」
肩から下げた重いエナメルバッグを、バチーンと哲に叩かれた。
つい1週間ほど前、哲には彼女ができた。
中学の頃の同級生の、希世という子だ。
俺が知ってる限り、哲は小学生のころから希世の事が好きだったから、彼は約10年越しの恋を実らせたことになる。
希世は、高校進学を機に都会に引っ越してしまったから、遠距離恋愛なのだけれどこの2人にはそんなこと関係なさそうだ。
うらやましい。
俺の10年越しの恋は実る気配さえ見せないだけに、とてつもなくうらやましい。
「耕貴、今日何時に部活終わる?」
同じクラスの美佳は、授業が終わったのと同時に俺の机に駆け寄ってきた。
「いや、今日はミーティングだけだけど…」
「ほんと?
じゃあ、駅前の珈琲屋で待ってるね」
美佳がこうやって、寄り道を提案してくるときは大抵何か相談があるときだ。
元気のない様子を見ると、あんまりいい相談ではないのだろう。
少しだけ嫌な予感を覚えながら、俺はエナメルバッグを担いだ。
「告られた〜?」
「またかよ」
そう漏らすと、テーブルの下でガツンと脛を蹴られた。
「相談のってくれる気あるの?」
ていうか、俺も哲も相談のるなんて一言も言った覚えはないんだけど…
「で?誰に告られたわけ?」
哲が、一気に飲み干したオレンジジュースをズズズッと吸い上げながら問う。
「……」
「ためるなよ」
笑いを含みながら言うと、また脛を蹴られた。
マジで痛い。