警部補 少年係-1
事件発生!窃盗。桜町8丁目コンビニ。
5、6人の刑事が一斉に狭い階段を駆け降りる。山田警部補と下中巡査部長のパトカーを先頭に出動。覆面パトカー2台が後に続く。
コンビニに到着すると少年はすでに店員に確保されていた。年は15、6か。
「万引きしたんか?」
山田が問うと、その少年はうなずいた。
「21時6分。窃盗の疑いで現行犯逮捕します。」
山田が言い、下中に目線を送る。
「カチャ。」(下中が少年に手錠をかける。)
パトカーの中で少年は終始無言だった。反省しているのだろうか。
21時15分。取り調べ開始。
所持品検査と身体検査をしてから椅子に座らせる。山田が少年と向き合って、無表情でうつむく少年にゆっくり語りかける。
「名前は?」
「田中義一。」(小声で答える。)
「ヨシカズって、どんな漢字?」
「……。」
「書いてみて。」
(紙とペンを渡す。)
(少年が書いて山田に返す。)
「はい。ありがとう。じゃ〜住所教えて?」
「天留川市(てるがわし)垣(かき)又(また)2の4の9、33号室。」
「33号室ってマンションやんなぁ〜?」
「うん。」
「どこの?」
「ハイバラ。」
「あっ。こやな。年いくつ?」
「17。」
「高校生?」
「うん。」
「誕生日は?」
「9月4日。」
(今日が10月30やから…多分。)
「高2?」
「うん。」
「高校どこ行ってんの?」
「紅(もみ)岡。(おか)」
「紅岡かぁ〜。」
「万引きしたん今日がはじめて?」
「うん」