警部補 少年係-9
「今のお母さんやな。」
「ちゃんと認めんのか?」
「今日、家行くかは状況次第やな。」
多種多様な手口の電話詐欺が横行している世の中。疑うのは無理もない。本物は辛いが…。被害を訴えてきて泣きつかれるよりはましだ。この女性は詐欺には絶対に引っかからないだろうな。
プルルルー
事情聴取5回目開始。録音。
「天留川警察です。」
「先ほどの者ですけど。」
「娘さんでしたか?」
「はい。通報したん娘です。」
「犯人見たんも嘘か?」
「いえ、それは本当だと思います。清子って言ったことは認めてるんで。」
「最近、娘さんに変わったこととかありませんでしたか?」
「う〜ん。特にないと思います。」
「そうですか。娘さんの名前と学年教えて下さい。」
「瑠璃子(るりこ)です。」
「漢字?」
「瑠は王様のオウ書いて留めるで、璃は王様のオウ書いて離れるって字の左です。子は子どもの子です」
「ナツウラは?」
「季節の夏に浦島太郎の浦です。」
「学年は?」
「中学3年生です。」
「年齢と誕生日は?」
「15歳。4月2日生まれです。」
「学校は?」
「海空七(うみぞらしち)学院です。サンズイの海に空(ぞら)は青空の空(ぞら)、7(しち)は漢数字の七(なな)で学院です。」
「はい。清子さん、あなたの年はいくつですか?」
「三九歳です。」
「三九。働いてはるんですか?」
「いいえ。主婦です。」
「娘さん働いてるんですか?」
「いえ。働いてません。」(少し驚いた様子で答える。)
「家行く言うた時にすごい渋りはって、働いてるって言ってましたよ。」
「そうですか。」
「住所教えて下さい。」
「大阪府高成市日陰ヶ丘9丁目13の11です。」
「電話番号は?」
「987の654321です。」