警部補 少年係-5
モクマル(目撃情報)
通信指令室からの音声が刑事課と少年課に流れる。やりとりが3秒遅れで伝わる。
「はい。どういうご用件でしょう?」
「あの、東京連続殺人事件の斎藤安行らしき人物を見たんですけど。」
(澄んだ女性の声。自信ありげな口調だ。少し挑戦的とも取れる。)
「いつ?どこで見た?」
「あの、天留川駅のフレンドリーの辺りで見ました。」
「フレンドリー?ってデパート?」
「はい。そうです。」
「そんなん知らんわ。新しく出来たん。」
「はい。」
「で、見はったんはその近くいうことでいいんですね?」
「はい。」
「じゃ〜。犯人の特徴教えて下さい。」
「三角顔でがっしりとした体形」
「じゃあ、住所とお名前教えて下さい。」
「え!…。」
「早く、早くして忙しいから。」
「え!大阪府高成市日陰ヶ丘9丁目13の11。」(すごく不思議そうに言う。)
「電話番号は?」
「987の654321。」(指令室が示してきた電話番号を確認。一致している。)
「名前は?」
「夏浦。」
「下は?(怒)」
「………………。」
「早く。(怒)下は?聞いてんのに答えてよ。(怒)」
「清子。」(早口で答える。)
「キヨコってサンズイヘン?」
「はい。」(少し低めのテンションで答える。)
「年いくつ?」
「え〜と40歳。」
「はい、ありがとう。」
プツ(無線が途絶える音。)
東京連続殺人事件というのは今から五年前、世間に衝撃を走らせた事件だ。というのは今はどうでもよくて、夏浦清子という人物に電話をする。日頃の勘で山田が対応する。暗黙の了解だ。