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警部補  少年係
【その他 推理小説】

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警部補  少年係-3

 後日、少年は塾の勉強についていけずそれが理由で両親に疎外されていると感じていたことが分かる。両親は共働きで夜遅くまで家に帰ってこない。中学にやっていた水泳もやらせてもらえず、ストレスの発散場所も居場所もどこにもなかったのである。寂しさと劣等感、親の期待に一生懸命に答えようとした結果、このような残念な犯罪に至ってしまった……。



連日、テレビのワイドショーや新聞・雑誌で少年犯罪が大きく取り上げられている。何とも言えない悲しい世の中だ。

―小学校低学年レベルの考えしかなく罪の意識が薄い。幼い中・高生が増えた。―

と世間は騒いでいる。確かにそうかも知れない。しかし一昔前と比べて予想以上に素直な子が多い。10年以上少年たちと関わってきて感じることだ。ただ、彼・彼女は自分をうまく表現できないのだ。昔は悪はとことん悪かった。子どもは生まれた環境や社会に染められてだんだん悪知恵を働かせるようになるものだ。ただ、それが度を過ぎると、犯罪になる。でも今は…時代は変わった。変わらないのはどの子も、根は悪くない、ということだ。最初から悪い子などいない。(ここでいう「少年」とは20歳未満の少年・少女をさす。)

 高度経済成長期が終わり、バブルがはじける。一方で、情報化が進みIT時代へ突入。メールが普及してコミュニケーションを取らない若者が増加している。欲しい物は何でもお金さえあれば簡単に手に入るが、将来の先行きは不透明。そんな社会で大人もストレスをかかえて生きている。子どもにもそれは伝わっているに違いない。いい部分も悪い部分も日々の中で吸収している。





狐の嫁入り、とでも言い表せそうなすっきりしない天候の中、僕はルンルン気分で署を後にする。久しぶりに家に帰れるのだ。家族と顔を合わせるのは五ヶ月ぶりぐらいになる。それだけ少年犯罪が続いている証拠だ。一人担当すると終わるまで帰れない。掛け持ちも当たり前のようにある。僕はよっぽどの凶悪犯罪でない限り責任者となる。

山田数(かず)吉(よし)。46歳。司法警察員大阪府警、警部補。世間は刑事と呼ぶ。家に帰ると父親。夫でもある。

「おっちょこちょい。ただいま。よしよし。」家に帰るといつも愛犬が一番に出迎えてくれる。黒ブチで4歳になる中型犬のオス。「おっちょこちょい」だ。僕と息子は反対したのだが…妻がどうしてもと言うので仕方なくつけた。今では愛嬌がある名前だ。人に言うとちょっとした笑い話にもなる。


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