警部補 少年係-14
「うん。いいよ。」(はっきりと認める感じで言う、山田。)
(少年が一瞬、え?というような表情をした後、うるうるした目で山田を見つめる。)
「今回、言ってくれてありがとう。」(感謝の意をこめる。)
(うなずく少年。)
「今度また見たときは、110番じゃなくて、交番に行ってくれる?日陰ヶ丘バス停の側にもあるし、天留川駅の中にもあるし。」(少し諭しながら言う。)
「はい。」
「うん。犯人見た日は友達と一緒に帰ってたん?」
「一人。」
「いつも一人で帰ってんの?」
「いつもは友達と一緒やけど、この日はたまたま。」
「なるべく友達と一緒に帰るようにしいや。」
「うん。」
「高校は上に進むん?」
「はい。」
「部活、何かやってんの?」
「卓球。」
「頑張ってんの。」
「うん。」(嬉しそうにうなずく少年。)
「最近は同じ年頃の子でも変な子多いし、気をつけや。」
「はい。」(少し悲しそうな表情をする少年。)
「何か最近困ってることとかある?」
(父親の方をちらっとみる。)
「特にありません。」(父親が答える。)
(山田が下中の方を向く。)
「他に何か聞いとくことなかった?」
「いえ、ないと思います」(答える下中。)
(山田が再び少年の方を向く。)
「じゃ〜もう帰るわ。」
山田と父親が同時に席を立つ。その後、下中が立つ。少年は座ったまま。
「さようなら。」(少年が言う。)
「また、来るかも知れない。」
そう言い残して、最初に入った扉から出て行く。入るときは、父親、山田、下中の順だったが、出る時は、下中、父親、山田の順である。玄関先でスリッパを脱いで揃え父親に礼を言う。階段を数段下りて門を出る。父親に会釈し覆面パトカーに乗る。
16時、事情聴取終了。無線で署に連絡をする。ほっとする山田と下中。一段落だ。