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「Mになった女王様」
【SM 官能小説】

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「Mになった女王様」-2

「いいバイクね。」そう美恵が声を掛けると、男は振り向いた後、案の定突然現れたとびきりの美女の前ですっかり金縛りにあっている。全く美恵の思うツボで、美恵に見とれて声も出ないようだ。長い脚を折り曲げてバイクの横に座り、しげしげとエンジン部分を除き込んだ。ただでさえ短いタイトスカートからさらに太ももがあらわになり、今にも下着までもが見えそうな状況で、男は更に体をこわばらせた。
「ふーん、ゼファーのナナハンをZU風に改造してあるんだ。中々硬派なバイクね。男臭くて素敵よ。」そう言いながら立ち尽くす男を見上げる。
「カ、カワサキのバイクがが好きなんです。」
男はやっとの事で言葉を発した。二十歳位の若い男だ。美恵はいつもは相当年上の男をプレイ相手に選ぶ。普段はネクタイを絞めて部下の前で威張り散らしている管理職の男を、体も心もズタズタに責めるのが快感でありストレス解消にもなるのだ。
「君、歳はいくつ?」美恵がそう尋ねると、二十歳で学生だと答えた。
(まっ、たまにはいいか。美少年をいたぶるってのも)
美恵は立ち上がって腕組みをし、ゆっくりと男の周りを一周して上から下までじろじろと男を観察した。男は相変わらずピクリとも動く事が出来ない。まるでライオンに睨まれた子うさぎのようだ。身長は美恵より少し高い175センチ程。今流行りのジャニーズ系の大変な美少年だ。
「渋谷辺りを連れて歩くにはぴったりねぇ…」
男をモノとしか考えてない美恵らしい言葉だ。美恵はルックスの醜い男とは絶対に外を歩かない主義だ。
「体格もいいし。名前は?」
「前田弘志です。」男がそう答えると、美恵はいきなり男の股間をむんずと掴んだ。
「ここはどう?自信ある?」
「あの…人並みだと思います。」
男は尚緊張の面持ちで答えた。いきなり出くわしたとびきりの美人に股間を掴まれるなど、これは一体自分にとって不幸な事なのかそれとも幸福とするべきなのか考えあぐねる。
「そう。どう?私と勝負しない?」
「何の勝負ですか?」やっと股間から手を離してもらえた弘志は驚いたように問いかえす。
「決まってるじゃない、ゼロヨンよ。そうねぇ…」美恵は右手をかざして道路を見渡した。
「あそこにバス停が見えるでしょ。丁度あの辺がここから4百メートルよ。」そう言うと美恵は車に戻り、弘志のバイクの横に車を並べて停めた。
「GTRですか…」やっと金縛りが解けたように弘志は美恵の黒のスカイラインGTRの隣へ寄ってきた。「俺のバイク、エンジンはほとんどノーマルなんですけど…」弘志が自信なさそうに言う。
「私もタイヤとホイールを換えただけのライトチューンよ。カワサキ乗りが四輪の挑戦を受けたら断われないでしょ。」それでもなお弘志は戸惑っている。
「もし君が勝ったら私の体を自由にしていいわ。」
その言葉で急に弘志の表情が変わった。戸惑いの中にも期待の表情が交じっている。
「そのかわり私が勝ったら、私の奴隷になってもらうわ。」
そう言いながら美恵は新しいタバコに火をつけた。落ちていた空き缶を拾い道路に立て、その上に今火をつけたタバコをのせる。
「いい?このタバコが下に落ちたらスタートよ。」
そう言って美恵は車に乗り込んだ。弘志も慌ててヘルメットを被りバイクにまたがる。美恵もアクセルを空ぶかししながら空き缶のふちにのせたタバコを注視した。じりじりとタバコは燃えていき、長く伸びた灰だけがポロリと落ちる。弘志もさかんにアクセルをふかしながらスタートのタイミングを計っている。やがて短くなったタバコが空き缶のふちから路面に落ちた。その瞬間、2台のマシンはすさまじい轟音と共にアスファルトを蹴り爆進を始める。美恵のGTRはもうもうと白煙をあげホイールスピンを繰り返す。弘志のバイクはあっと言う間にGTRを突き放した。しかしGTRの白煙が収まりタイヤがグリップを取り戻すと、じりじりと弘志のバイクを追い詰める。やがてゴールのバス停が近づき、寸前で美恵のGTRは弘志のバイクを交わした。弘志は信じられない、という表情で立ち尽くしている。いくら相手がGTRとはいえ、瞬発力とエンジンレスポンスがものをいうゼロヨンレースなら絶対に二輪のほうが有利なはずだ。立ち尽くす弘志のそばに車を寄せて美恵はニヤ
ニヤしながら言った。
「ごめんね、ライトチューンなんて言ったけど、本当はタービンを換えてるの。」
美恵がポン、とボンネットを開けてみせると、弘志は青ざめた顔付きでエンジンルームを覗きこんだ。ノーマルよりもはるかに大きなターボチャージャーが腰を据えている。慌ててフロントバンパーの下を覗きこむと、黒い金網のその奥にノーマルよりはるかに大きなインタークーラーが見える。この黒い金網で全く気付かなかった。


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