唯高帰宅部茜色同好会!(第二章)-13
「アイサ、乗り物はもういいのか?」
「ええ、やはり私にはこういった場所は似合わないみたいです」
カフェには何人かの生徒がいたが、気にし過ぎても何もできないので構わず入店した。
「そうか…なに頼む?」
「コーヒーを」
「じゃあ俺も。すいません、コーヒーふたつ」
店員さんに声をかけると、すぐに運ばれてくる。
「アイサはコーヒーより煎茶のイメージだ」
「失敬な、私だってコーヒーくらい飲みます。味の良し悪しはわかりませんが」
「はは、純和風って感じだからな」
会話は普通に弾んだ。六人でも二人でも、アイサは変わらず平静を保っている。
「ユーリは純和風とは違いますね。当たり前ですが」
「そりゃハーフだからな。アイサは純和風じゃないと嫌?」
どうせなら、片足くらいは突っ込んでみたい。
せっかくの二人きりのチャンスなんだ。
「それは勿論、そういったことは全く気にしませんよ。どうせなら、世界中の人と友達になりたいくらいです」
「友達…ね。恋人なら?」
自分で言っておいて恥ずかしい。
そして、なぜか腹を括っている自分がいる。
「恋人…ですか。そういったことは考えたことがありませんから」
アイサの顔色は変わらない。
「…そうか」
「…でも先日、マリィに変なことを言われました。その、私はアッキュ狙いなのではないかと」
「……え?」
「私自身、人に対して恋愛感情を持ったことがないので否定したのですが、そこで無意識に饒舌になっていたらしく」
「……」
「マリィが、アッキュにはサキがいると言ったとき、私は何故だか心臓の鼓動が速くなりました。だからとっさにアッキュとサキの関係を問いただしてしまって…」
確かに今も饒舌になっている。
「私はもしかして、アッキュに恋愛感情を抱いてしまっているのでしょうか?」
「……っ」
そうか、アイサはアッキュのことを…
「…そうなんじゃないか?」
俺は笑顔でそう答えていた。
「…やはりそうですか。私はアッキュのことを…」
胸元に手を当てているアイサ。
顔はなんだか紅潮していた。
そんなことない、気のせいだ。
アッキュにはサキがいるから無理だ。
とっさにそう言おうとした自分が憎い。
でも、俺は自分に甘い人間にはなりたくなかった。