唯高帰宅部茜色同好会!(第二章)-12
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「あれが夏の大三角…なるほど、ベガとアルタイルが織り姫と彦星なのですね」
「……」
俺とアイサは、特設会場でプラネタリウムを鑑賞していた。
柔らかな椅子に腰掛けて頭上を見上げると、綺麗な光景が視界一杯に広がっている。
ナレーションの声に耳をすませながらいろいろな星座を見ていると、なんとなく気持ちが和らいだ。
ちらりと隣の様子をうかがうと、アイサはぶつぶつとナレーションの言葉を反芻している。
アイサがプラネタリウムを見たいと言った理由はすぐにわかった。
やはりせっかく来たのだからただ座っているだけじゃなく、いろいろなアトラクションを回るのが普通だからか、ここに生徒は全くいなかった。
気をつかっているのだろう。
俺に変な噂が立たないように。
「…オリオン座、あれはよく見ますね」
「……」
別に俺はモテたいわけじゃない。
できることなら、何かと騒がれることなく普通に高校生活をおくりたい。
ずっと連んでいたい仲間もできたんだから、そっとしておいてほしいと常々思うくらいだ。
それに今、隣には初めて俺から付き合ってほしいと思った人がいる。
この間の大富豪だって、負けてもいいという気持ちで臨んだ。
負ければアイサに告白できるんだから。
そして俺は負けた。
でも、悩んだ末に自ら振られるという結論に至った。
告白がうまくいってもだめになっても、次に騒がれるのはアイサになってしまう。
それは嫌だった。
いくら悩んでも、いい方法は思いつかなかった。
このままじゃ、何もかもうまくいかずに終わってしまうんだろうな。
「ああ…終わってしまいました」
照明が点き、静かだった会場はざわつき始める。
「ユーリ、見ていましたか?」
「あ、ああ、見てたよ」
「美しい星空でしたね。茜色の夕焼けもよいですが、夜も好きになりました」
珍しくハイテンションなアイサの姿に俺の心臓は高鳴る。
こんな姿を、ずっと見ていたい。
「ああ、これからどうしようか」
二人して席を立つと、出口へ向かった。
「柄にもなくはしゃいでしまい、喉が渇きました…よろしければ、お茶にしませんか?」
「ああ、出て向かいにカフェがあったからそこにしよう」
「はい」