唯高帰宅部茜色同好会!(第二章)-10
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「あっはははは!!!」
「ちょっ!つべてっ!」
俺とマリィは、ウォータータイドコースターなんていう下が水たまりのジェットコースターに乗っていた。
コースター自体はゆっくりしたものだが、最後の坂を下りるとプールに向かってバッシャーンとなる仕掛けらしい。
「キスケ、メガネ落ちそう!」
マリィはケラケラ笑いながら俺を指差す。
「んぁ、ほんと」
吹き飛ばされて俺の相棒が行方不明になっては困る。
他のジェットコースターでは最悪拾ってもらえるが、プールの底に沈んでしまっては回収は無理だろうと感じた俺は、メガネを外してポケットにしまった。
視力の低い俺はメガネを外すとほとんど何も見えない。
ジェットコースターで何も見えないのは怖いから無理してかけていたが、流石に我慢しよう。
「さあ落ちるわよー!」
「お、おお…」
マリィはいかにもワクワクしたような声を出している。
顔はぼやっとしか見えないが、それもまたすごく可愛いんだろう。
「きゃああああ!」
「おわああああ!」
バッシャーン。
この擬音はとてもあっている。
なぜなら全身ずぶ濡れだからだ。
「げぇ、ビッチョビチョだぜ」
「わかってるわよ。それを承知しで乗ったんだから」
コースターは終点に到着し、安全バーが上げられた。
「俺を巻き込むなよ」
「いいじゃん、キスケなんだ…し」
あれ、水が目に入ったか?
マリィと向き合っているはずが、よく見えない。
「キスケが眼鏡外してる顔、初めて見るかも」
「あ、そうだったぜ」
人前で眼鏡を外すことが一切ないから、数分前のことをすっかり忘れていた。
ポケットを弄って眼鏡を引き抜くと急いでかけた。
ああ、やっぱりマリィだ。
眩しい笑顔は、俺がずっと憧れていたマリィのそれだった。