GET OUT OF MY MIND-1
思い出なんてのは忘れちまったほうがいいのかもしれない。
そんなもん全部捨てて、気楽に生きていけたら、なんて思う。
あんたが俺から離れていったのは、ただの気まぐれ。
女の我儘、俺の我儘。
バカらしいな、それだけのことがこんなにまでつらい、なんてさ。
捨てきれない。この思い出を捨てたら、誰かがきっと拾ってく。
俺だけのあいつを、拾われたらもう、アウトだ。
思い出を捨てておけたら、誰だって苦労しないさ。
好きなときにだけ紐解いて、つらいときにはほうっておく。
そんなふうに自分をコントロールできたら、あいつが離れていくこともなかったんだ。
世の中、うまくいくことなんてこれっぽっちもありゃしねえ。
通り過ぎた街角、その場所ごとにあんたが渦巻いてる。
俺に振り向いて、笑顔、そんで走り去ってく。
追いかけようとした、空からあんたの声。
逃げられっこないぜ、これじゃあ。忘れられっこない。
もう動くわけない時計のネジ、いつもと同じように回してた。
時計は狂ったまま動き続けて、あいつはうれしそうに笑ってた。
俺だってそうさ。
壊れてたって持っていたい、あいつとの思い出。
道端に座り込んで、あんたの影を見る。
ため息をついてはまた、他人の空似、舌を打つ。
街中の女の顔が全部あんたに見えて、
イカレてるな、そんなら話は早いのに。
灰色の街に泥を吐き出し、倒れこむ、あんたしかいないのに
忘れる気もないくせに忘れたいだなんて、
消えてほしくもないくせに消えうせろだなんて。
「あんたがいなくなった時から、俺はぬけがらだよ。」
また同じような夜がやってきて、離ればなれの俺たちを包むけど、
きっとあんたは俺が思い病む夜を、軽く飛び越えて朝日を迎えるんだ。
俺が座り込んでる間にあんたは、別の道をどんどんいっちまうんだ。
俺だけ忘れられないなんて、ずるいよ。
(Image/Joy-pops[GETOUTOFMYMIND])